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2004.01.10

=(ニア・イコール)森山大道

私が意識的に写真を撮り始めるきっかけになった写真家は、もう紛れもなく森山大道その人である。ふと手にした写真集『新宿』で衝撃を受け、『犬の記憶』でさらに考えさせられ、そして同じリコーのGR1vを手に入れるにいたって、愛情は信仰に昇華したといってよい。昨夏、島根県に自転車旅行をした折に、目的地の一つに島根県立美術館を選らんだのは、森山の展覧会が春に開かれていたことと深く関係する。果たせるかな、彼のサイン入りの展覧図録を手に入れて、今では私の宝物の一つになっている。

森山大道の人と活動をドキュメンタリーとして撮影した映画があるのを知ったのは最近である。それが「=森山大道」というタイトルであることも。見たいと思ってもそう簡単にテレビで放映するようなものではない。ところが、ケーブルテレビ系の日本映画専門チャンネルで正月に放映されたのである。なんという幸せ。もちろん録画した。

映画の全編にわたり、聞き慣れたGR1のシャッター音とモーター音が響き続ける。それが映画の通奏低音となり、途中から自分がカメラを操作しているような錯覚すら覚えたほどである。大作『新宿』に収めらることになったであろう写真を撮る森山の姿を中心にして、彼のインタビューやプライベートの姿などが絡められる。そこにはカリスマというイメージからはほど遠い、意外なまでに繊細でシャイな男が描かれていた。しかしながら、撮影に関しては剛胆なまでの振る舞いで、どんなところにも大胆に切り込んでシャッターを押し続けている。伝説の高速ノーファインダースナップ撮影の迫力は、ことばで表現できるものではない。

写真はカメラではないのだ。

森山大道をよく理解する人物として荒木経惟が登場する。天才アラーキーをして、写真史に残る人物、新しい写真の世界を作った人物と評される。そこには微塵の嘘も感じられなかった。「写真を撮る人はこれまでカメラの奴隷であった。森山は初めてカメラを奴隷にした」と語る荒木のことば(そして機材に頓着しない森山の活動)は、ブランドやスペックに一喜一憂する者たちをあざ笑うかのようである。

見応えある84分のドキュメンタリーであった。DVDも出ている。これは(笑)。GRを手にして、軽やかに街を走り抜けたいと、ますます強く思った。

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コメント

被写体によりかかるのみの写真家は、所詮思いつきの域を出ない人々だと思います。真に訴えかけるものを生み出せる人は、対象の如何を問わず、本質をえぐり出し自らの表現として昇華させています。そういう点で森山大道とJames Nachtweyは覚悟を決めていると、私も思います。

ロバート・キャパは戦場で手が震えたために、逆に傑作を生み出したそうですが、私だったら、きっと腰を抜かして何もできないでしょう(苦笑)。

投稿: morio0101 | 2004.01.27 04:21

morio0101さん、こんばんわ。

特別な人のDVD、買われましたか。これで、いつでも良い画質で楽しめますね。

さて、森山大道とJames Nachtwey。
私は、彼ら二人とも同じものを撮影していると考えています。もちろん、直接的には「街」と「戦争」となるのですが、結局は「人間の生活」のドキュメントをしているのではないかな、と。そして、お二方とも同じような覚悟をもってシャッターを切っているのではないかな、と。

さらに私にとって、前者は身近な生活なだけに大きな現実感が心を押しつぶしそうになるのに対し、後者はあまりにも離れすぎた場所での生活なのでいまいち現実感が感じられず、むしろ自分の目で現場を確認してみたい誘惑に駆られます。

#あぁ~、一度、James Nachtweyにくっついて行ってみたい、少し不安ですが...。

では、また。
恐れ多くも偉大なお二方に間抜けなことを書いてしまったかもしれません、失礼しました。

投稿: otknb | 2004.01.27 01:35

otknbさん、こんにちは。

お求めになりましたか。実は私も録画したのにDVDも買ってしまいました。まぁ、私にとって特別な人なのでいいのです(笑)。写真家の活動をこうして動画で見られる機会がほとんどないので、その意味でも貴重かなと思います。

James Nachtweyは生々しくて見ていて心が痛くなります。あの状況に向き合ってシャッターを切れる精神的な逞しさは、やはり相当の覚悟がないと培われないでしょうね。

投稿: morio0101 | 2004.01.20 18:40

こんにちわ。

「=森山大道」、購入してしまいました。James NachtweyのWar Photographerをポチッとしてしまったので我慢をしていたのですが、背中を押されてしまったような気がします。

さて、内容は...いやむしろ森山大道よりも猪瀬光を動画で見れたことがうれしかったです。あのような写真を撮る方ですが、そう、「写真にだまされたらアカンヨ」(だったかな?)ですね。

写真にだまされたら...

では、乱文失礼しました。

#遅ればせながら、こちらこそよろしくお願いします.

投稿: otknb | 2004.01.20 00:52

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