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2004.02.11

島本理生『リトル・バイ・リトル』(講談社)

今回の芥川賞でノミネートされた史上最年少組の中で、残念ながら一人落選してしまった島本理生。彼女の小説が読んでみたくなって、「生まれた森」ではなくて前作「リトル・バイ・リトル」を買ってきた。彼女はこれで野間文芸新人賞を史上最年少(こればっかり)で受賞した。ちなみに第一二八回芥川賞の候補作にもなっており、その時に受賞していたら、史上初の高校生芥川賞作家の誕生になるところだった。

「明るい小説にしようと、最初から最後までそれだけを考えていた。淡々と流れていく日々を照らす光を書きたかった。」と島本自身があとがきで語るとおり、小説は隅々まで明るい雰囲気で満たされている。しかしながら、作中人物を取り巻く状況そのものは決して明るいものではない。そして「そういう状況に対抗できる唯一の手段は明るさではないかと思う」とも語る。あまりにも素朴すぎて鼻白むほどである。描かれる世界は両手を広げたほどの極めて狭い日常生活で、そういう意味では高校生の日記を読まされているような感じすらしたのであるが、こういう少し風変わりな状況の中で、ささやかな幸せや感情の揺れのようなものをもれなく掬い取るのが、この世代の小説の共通する要素であるように思われる。

私はこの小説が綿矢りさの署名で発売されても決して驚かないし、「蹴りたい背中」が島本理生の作だと言われても、疑うことはしないだろう。

それでもどこまでも微温的な島本に対して、感情の襞をチクチクと刺激する毒(淡いけど)を含み持つ綿矢の文章を比べると、おのずと進む道が分かれていくような気もする。さて次は一番毒の強そうな金原ひとみを読むことにする。

なお「リトル・バイ・リトル」の表紙写真は川内倫子が撮影している。川内も若くして木村伊兵衛賞(カメラ界の芥川賞でしょうね)を受賞している。ふむと一人うなづいたりしてみる。

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