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2004.02.13

金原ひとみ「蛇にピアス」

「文藝春秋」の芥川賞受賞作掲載号はお得だなぁと思いながら、よく買ってくる。発売中の2004年3月号も綿矢りさ、金原ひとみの両受賞作が全文掲載されている。どこの本屋に行っても大量の「文春」が積み上げられていた。

「蹴りたい背中」はすでに単行本で読んでいたので、「蛇にピアス」に取りかかる。冒頭から痛みを伴う描写の連続で、はっきりいって好みではない。体のあちらこちらに穴を開けたり切り裂いたり。あとは飲む、喧嘩する、殺人がある、セックスがある、拒食症がある、SMがある……。そういうくだりに嫌悪感を抱きながら、というより嫌悪感をどこかではらしてくれるだろうと思いながら読んでいったら、終わってしまったよ。

これも愛の形といってしまえばそれまでだが、とにかく描き出す世界、物事が私にとって異世界のものなので、そういう部分での衝撃がまず最初にある。図らずも選評を寄せる高樹のぶ子の「作者の人生の元手がかかっているであろう特異な世界を実にリアルに描いている」ということばが、とても素直に飲み込めた。ただその「特異な世界」を納得するほどには私は物わかりがよくなくて、普段は大嫌いな東京都知事の選評「私には現代の若もののピアスや入れ墨といった肉体に付着する装飾への執着の意味合いが本質的に理解できない。(略)私にはただ浅薄な表現衝動としか感じられない」というのにも、ついそうだと思ってしまった。いや、その程度で「身体改造」なんて言うなよとも思うのである。千手観音とか阿修羅みたいにしたというのなら、立派な身体改造だけど。誰が見てもすぐにわかる。

小説とは関係のない話になってますね(苦笑)。

愛情を感じる相手のしていることに共感し、同じことをしようとする。さらに相手が気に入るようなことを、自分が積極的に行おうとする。「蛇にピアス」で描かれている恋愛を単純化すると、実に古風な関係が出現する。昔ながらの恋愛小説だとは言わないけれど、あまり変わっていないかなとも思った。あと気になったのは結末とそこへの持っていき方が陳腐であること(ネタバレになるからここでは書かないけれど)。受賞後、新聞記事で読んだ金原ひとみの頭のよさそうな文章から、かなり楽しみにしていたのだが、読後に残るのが「痛い描写」だけというのはちょっと残念であった。次に期待したいと思う。

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