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2004.02.06

三島靖『木村伊兵衛と土門拳』(平凡社ライブラリー)

昨年、日本映画専門チャンネルでは黒澤明監督の映画を連続して放映していた。「七人の侍」以下すべての代表作が予定されていたので、この機会にと思っていたが、結局ほとんど観ることがなかった。何か惹かれるものがないのである。一方、2003年は小津安二郎監督の生誕百年にあたる年でもあった。それを記念して松竹で撮影した作品がDVD化されたり、NHK衛星放送で連続して放映されたりした。こちらは自分で高価なDVDセットを買い込み、熱心に鑑賞した。黒澤と小津の違いはどこにあるのか。

小津映画は関心を持って観るものにすら、アレとコレの差がわかりにくいという特徴(?)を持つ。つまり特別な事件が起こったりドラマがあったりするわけではなく、淡々とした市井の生活がいつも描かれるだけなので、強烈な印象が残るということがほとんどない。そのかわり、曰く言い難いムードというか、雰囲気に酔わされてしまう。それに対して黒澤映画はもう演出、演出、また演出で、とにかく派手である。もちろん小津映画もあの静謐さを手に入れるために演出を施しているはずであるが、それを見せないし、感じさせることがない。どちらがいいということではない。私はあざとい黒澤映画的な世界が苦手なのである。

同時代に生きた二人の写真家、木村伊兵衛と土門拳の関係を小津と黒澤に喩えることは、あながち的外れではないと思う。「絶対非演出の絶対スナップ」などと唱えながら、執拗に対象を追いつめてカメラに収めようとする土門に対して、木村はあくまでも軽妙洒脱に世界を切り取る。この本ではそうした二人の対照的な作風や生き方をうまく浮き彫りにしている。被写体、カメラの選択、他の写真家への意識など、こうも違うものかと思わされた。

淡泊な私は「念写」とか「拳魂」などと言われると、「ごちそうさま」と言うしかないです。

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コメント

土門拳の写真が苦手と言うより、作品ができあがるまでの過程や彼の生き方そのものが苦手と行った方がよいかもしれません。客観的立場から、土門の業績が偉大であることには微塵の疑いも持っていないです。

atcyさん、TBできるブログに引っ越しするとか(笑)。

投稿: morio0101 | 2004.02.08 04:39

私も土門拳と緒形拳は苦手です。しかし、緒形拳はともかく(爆)、土門拳って実はお笑いだったんじゃないかとある時考えてから、急に親しみが湧きました。ギャグのつもりで、怒ってみせたりして、それが滑り続けてマジに怒らねばならなかったのではないか、と考えると素敵過ぎます。ま、そんなことは無いでしょうけど。(笑)
小津は特別な人です。後にも先にも、あんな人は二度と出てこないでしょう。いずれ、私も自分のBlogに何か書いてみたいと思います。TB出来ないけど。(涙)

投稿: atcy | 2004.02.06 21:46

ども,fotologのayanoです。
私は土門拳,好きですよー。写真集も数冊持ってます(笑)

「フィルムが勿体ないといって,家族のスナップ写真など撮ろうとしなかった」とか「絶好の光が来るまで待つ」といって,雪の降る寺に何日も座り込んで仏像を撮るとか,重いです。もう,信じられないくらい重いし真剣。

デジカメで育っちゃった自分には,こういう真剣さはもうどうしても得られないような気がするんですよね。もともとの性格が軽いのかもしれないですが。
だってデジカメだったら,フィルムじゃないから何枚撮ったっていいし,待ってるような光が来なかったなら,Photoshopでいじってしまえばいい…。

作り込みすぎてる土門の写真は,重すぎてついて行けない…とおっしゃる気持ちはわかります。きっと現実に今の世界でこういう人がいたら,私も「ついて行けない」って思うんだろうなあ,と。
でも,今改めて土門拳という人の写真を見ると,平成のデジカメ時代にはあり得ないような真剣さ,重さがヒシヒシと伝わってきて,その重さが私には眩いなあ…と思うのです。

昭和は遠くなりにけり。

投稿: ayano | 2004.02.06 21:45

コラムを読み、黒澤明、小津安二郎、木村伊兵衛と土門拳・・・ これらの人物の作品に接するたびにmorioさんのコラムを思い出すでしょう。
なるほどな・・・と、一人納得した当直の夜です。

投稿: sugulu | 2004.02.06 21:32

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