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2004.03.23

eiko

eiko.jpg「信じていれば、幸せになれるよね」はいい。でも「アメリのような女の子」はいけない。eikoはアメリでは決してない。両者は似て非なるものである。大ヒット作にあやかるのは宣伝という意味でわかりよいが、借りた看板によって失うものは相当大きい。そもそも成功したものに露骨に寄り添うさもしい根性が嫌らしくて情けない。

デザイン事務所に勤める秋森エイコ(麻生久美子)は、気弱でお人好しな性格である。彼女は疑うことを知らない性格で、キャッチセールスや訪問販売でがらくたばかりを売りつけられている。今日も人生の転機となるという変な石を買わされた。その翌日、勤めていた会社は社長が夜逃げし、給料未払いのまま倒産した。借金がかさむ彼女の自宅には、町金の取り立て屋が張り付いているし、恋人を訪ねても金を持っていないことを知ると冷たく追い返される。行くあてのなくなったエイコが会社の社長宅を訪れたところ、江ノ本という見知らぬ痴呆老人(沢田研二)が住んでいた。成り行きでエイコは江ノ本のマンションで共同生活を始めることにする。しかし、実は江ノ本は詐欺師だったのだ……。

話の行きがかり上、アメリとエイコを比べてみる。アメリが自分の意志で積極的に世界と関わろうとしていた女性であったのに対し、エイコはひたすら純真無垢な精神を持つ内向的な女性である。彼女は決して自分から他人の人生に関わろうとはしない。自分の積極性や関与する意志、計画を巧妙に隠し通し、主体的に匿名の幸福をばらまいたアメリと、そういうことをまったく考えていないエイコとでは、生きる力の向いている方向が180度異なっている。

また他人を信じて人間不信になったエイコは、最後にやはり人を信じて救われる。エイコの周囲の人も彼女と関わることで、自らの考えや生活を清められる。ただしエイコ自身は自分の存在が他者を救っていることに気付いていない。一方のアメリは人間不信になっているわけではなく、自分が周囲に幸福を振りまいていること(見方によっては善意の押しつけにも思えるほど)を強く自覚していた。これも両者の違いの際立つ部分である。

つまりはヒロインのあり方が根本的に違うのである。エイコを「日本のアメリ」と言われてもとうてい頷くことはできない。

アメリの色を抜いてこの映画を観た場合、ヒロインとそれに関わる人々の成長物語として、とてもわかりやすい物語になっている。しかし、その分、深みを感じさせないし、かといってファンタジーとして軽みに徹しているということもない。麻生久美子の美しさと可愛らしさにおんぶにだっこという、何とも惜しい映画であると思った。加えて沢田研二ももう少しうまく使えるんじゃないのか。脇役も豪華なわりに、単なる顔見せに終わってしまった。これも惜しい。監督はテレビ(「いいひと」「HERO」「恋愛詐欺師」など)で活躍してきた加門幾生。やはり素性は隠せず、2時間テレビドラマ風になってしまったか。シネ・リーブル梅田で鑑賞。

麻生久美子は演技もうまいし、容姿も優れている。画面での存在感も抜群で華もある。なのに「麻生久美子といえばこれ!」という代表作に恵まれていない。ファンとして残念である。そういう状況にあって、現時点で最も評価されているカンゾー先生がようやくDVDとして発売されるのは喜ぶべきことであろう。

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コメント

>suguluさん
この映画、あまり深みはないです。麻生久美子にどれだけの思い入れと共感が持てるか、それがすべてかもしれません。夕張映画祭は憧れです。
>yukiさん
も、もらったんですか。今度から放置しているやつをこっそり横流しして下さい。:D でも、着払い送料の方が映画を見に行くより高くなるか。意味なし(笑)。静かに公開を待つことにします……。

投稿: morio0101 | 2004.03.26 02:56

あー、そういう映画だったんですねー。2ヶ月ほど前にビデオをもらったのですが、そのまま放置しておりました……。
アメリはずいぶん無理がある話をうまくまとめたなぁと思っていたのですが、人が言うほど感動もせず。フランス映画はもっとフツーのがスゴイのよと心の中で思いつつ.... :)

投稿: yuki | 2004.03.24 23:25

morioさんの映画評とても好きです。
もうすぐ北海道で上映されるので、是非見に行ってみようと思います。
一度も行ったことないんだけど、夕張の映画祭に行ってみようかな。

投稿: sugulu | 2004.03.24 12:58

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