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2004.03.30

永遠のマリア・カラス

ちょっと売れる女性歌手が登場すると、すぐにディーヴァ(歌姫)ということばが氾濫する。同じようなことばにカリスマもある。これもちょっと人気が出たら、すぐにカリスマ扱いだ。いずれも思慮が足りなくて軽薄すぎる。そしてたいていはつまらない人物である。ディーヴァやカリスマなどというものは、本来個人の思い入れや一時の現象だけで決められるようなものではないだろう。本人の資質はもとより、社会(共時的)や歴史(通時的)に多大な影響を与えているかどうかを抜きにして語ることはできない。

さて今さらマリア・カラスをディーヴァと呼ぶこと自体、浮ついた感じがして憚られる。1950年代から60年代にかけて活躍した、このクラシック界きってのソプラノ歌手は、強烈な個性と歌唱、そして奔放な生活、突然の死などとあいまって、紛れもなくディーヴァの名にふさわしい人生を送ったといえる。

1974年の日本公演を最後にすべての音楽活動を絶ったマリア・カラス(ファニー・アルダン)は、蓄えた資産で日々の生活を送るだけの存在になっていた。敏腕プロデューサーのケリー(ジェレミー・アイアンズ)はそれを惜しみ、カラスを今一度芸術の場に立たせることを企図する。それは現在のカラスの演技に、絶頂期の彼女の声をかぶせたオペラ映画を撮影するというものだった。一度は拒否するカラスだが、往年の美声で歌う自分のビデオを観て、撮影に同意する。しかし、完成した映画を観たカラスの下した判断は……。

「永遠のマリア・カラス」は生前のカラスと親しかったフランコ・ゼフィレッリ監督が、事実と虚構を織り交ぜて創作した映画である。観るまでは多少の脚色を含むドキュメンタリーだとばかり思っていたので、拍子抜けしたというのが正直なところである。実際に映画もふわふわした掴み所のないものになってしまっており、単にカラスを芸術に厳しくあろうとする人物としてステレオタイプ的に提示するだけである。また肝心の音楽も細切れに流れるばかりで、とてもカラスの魅力を伝えるものにはなっていない。

薄命のチェロ奏者デュプレを描いた「ほんとうのジャクリーヌ・デュプレ」も同じく脚色された映画だったが、作品に重厚さがあり、大きな満足感が得られた。逆に稀代のソプラノ歌手という好素材を扱いながら、その魅力を描ききれていない「永遠のマリア・カラス」は、すべての点において物足りなさを感じさせるものである。

余談:日本のディーヴァは美空ひばりと山口百恵しかありえないと思う。

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コメント

>mocoさん
いらっしゃいませ。お久しぶりです。fotologの方は近頃お休み状態で、コメントもつけにいかず、失礼しております。通勤中にカラスですか!? 朝からばっちり目が覚めそうです。何をなさるのでしょうか。いや、楽しそうで羨ましい。

>mamma_miaさん
いえいえ、私も狭く浅くです(だめだぁ)。オペラもミュージカルも見慣れてくれば同じようなもの……、というわけにはいきませんが、ある程度、内容を頭に入れておけば、あとは音楽に身を委ねて楽しむことができると思いますよ。まずは「アイーダ」を比較するとか。

>し〜やもんさん
レンタルなら300円ほどなので、それなら許せると思います。1800円ではちょっとお薦めしません。一方の「ヴァイブレータ」は秀作です。時間があれば、ぜひ劇場でどうぞ。B級邦画はレンタル屋に並ばないこともあるので。

>atcyさん
クライバーのは、二つある「ばらの騎士」のうち、バイエルンと組んでやった方だったでしょうか。ちょっと記憶が……。クライバーが人の言いなりになるとは思えないので、それがよかったのでしょうね(酷い言いぐさ)。今はカラスほどの毒を持つ歌手はいるのかなぁ。みな、上手だけど。

投稿: morio0101 | 2004.04.01 14:03

ゼフィレッリの映画に見るべきモノは無し、というのが私の経験則です。クライバーと組んだシュトラウスのオペラだけが歴史に残るでしょうが、それもクライバーあってこそだと思っています。
カラス+カラヤン+ミラノのスカラ座、といえば呪われた椿姫が有名ですが、呪縛を解いたのが凡庸なムーティだというのはさておいて、映画化して欲しいなあと思ってます。

投稿: atcy | 2004.03.31 20:30

マリアカラスは、前評判を聞いて、見てみたいと思っていたので、morio0101さんの記事みて、悩むところです。
でも、↓のヴァイブレータは、映画館で見たいと思っていたくらいなので、ビデオ化されたら見ようと思います。

投稿: し~やもん | 2004.03.31 18:11

morioさんはクラシック通だって誰かが
meet up で話しておられた通りですね。(^^)
勉強になりますね!!

私は超有名で誰もが聞き覚えある様な
クラシックしか判らないけど
ヨーヨー・マのコンサートに去年10月行って来ました。
もう感動で涙が出ましたよ~!!!
(↑見かけに寄らず・・・笑)

投稿: mamma_mia | 2004.03.31 00:23

こんにちは
こちらにもお邪魔してしまいます。
何故ならば 今年に入ってずーっとマリア・カラスを通勤中に聞いているからです(笑)
しかも自分が弾く歌劇曲の練習用です(爆)
ほんま ええ声してはりますわぁ...

投稿: moco | 2004.03.30 19:01

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邦題:永遠のマリアカラス 原題:Callas Forever 監督:フランコ・ゼ [続きを読む]

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