CASSHERN
竜の子プロ制作の原作アニメ「新造人間キャシャーン」は見たことがない。名前だけは知っていた。思い入れや設定などの予備知識がない分、先入観や偏見抜きで観ることができた。それがかえってよかったのかもしれない。いい意味で裏切られた思いがする。2時間20分という長い映画だが、最後まで飽きずにおもしろく観た。ただ観客を選ぶ映画だとも思う。
50年にも及ぶ世界規模の大戦争の後、地球上のすべてのものは絶滅の危機に瀕していた。放射能やウイルスに冒され、細菌兵器や化学兵器による公害などによって荒れ果てた大地では、互いに信じられなくなった人々が尽きることのない争いを繰り広げている。そうした状況の中、人類が生き延びる方法を提唱した人物がいた。人間のあらゆる部位を自在に生み出す新造細胞理論を唱える東博士(寺尾聡)その人であった。博士の理論は軍の援助により研究が開始されるものの、やがてそこから恐るべき新造人間が誕生する。自分たちの手によって生み出したものによって、人類はいよいよ滅ぼされようとする。その時、最後の光として現れたのは東博士の一人息子、東鉄也(伊勢谷友介)であった。彼は戦死した後、新造人間として蘇った。しかし、鉄也は父に反発心しか持っていなかったのである。キャシャーンを名告る鉄也の選択する生き方はいかなるものか。
単なる勧善懲悪ものではない。映画では正しさは一つではないことが何度も繰り返し語られる。それは昨今の世界情勢を踏まえてのことかもしれない。それぞれが自らの正しさを大義名分に、終わりのない戦いを続ける。キャシャーンが人間の側につくか、新造人間の側につくか、物語の中でははっきり決着はついていない。彼は時々にそれぞれと戦う。正義感などはどこにもない。その刹那、置かれている状況を解決する方途を選ぶだけである。ある人の思いを叶えると別の人は不幸になる。シンプルだが残酷なまでの現実を、キャシャーンの逡巡する姿から観客は感じ取ることになる。
宇多田ヒカルの歌うテーマ曲には「みんなの願いは同時には叶わない」という歌詞がある。辛い。
鉄也の恋人役上月ルナを演じる麻生久美子は神々しいまでに美しい。唐沢寿明をボスとする新造人間軍団の各キャラも個性が明快で際立っている。特徴的な画面作り(ほとんど荒廃したシーンばかり、色は厚く濃く深い、光の滲んだような映像が多い)も、私は美しいと思った。「エヴァンゲリオン」の影響が大きいとする映画評もあるが、私はそれも知らないので、何とも言えない。音楽はクラシック、ロックが中心で、鳴りやむ時がない。画面とよく合っていた。パンフレットは三分冊になったものがケースにまとめられるという凝ったものである(900円は高いけど)。紀里谷和明監督から「宇多田ヒカルの夫」という肩書きをひとまずはずしてもいいかと思った。ワーナーマイカルシネマズ茨木で鑑賞。公開初日、夕食時の回でほぼ満席。「CASSHERN」公式サイト
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コメント
>し〜やもんさん
「映画が人を選ぶ」というのは比喩的な物言いです。好き嫌いがはっきりするとでも解釈してもらえればよろしいかと思います。そういう二者択一のような直接的表現を使いたくなかったので、もってまわった言い方をしています。
人が何に心を動かすかは千差万別ですから、自分の感じたところを信じたらよいと思っています。ただそれはあくまでも個人的なものであって、他の人がどう感じているかということへの目配りも必要であると、これは私自身への戒めとして意識しております。私はよく暴走しますので(苦笑)。
あとはそれぞれの立場で話を建設的に進めていけたらおもしろいのですが、こういう場所ではなかなか難しいですね。
投稿: morio0101 | 2004.05.26 03:45
写真もそうだけど、映画も見る人によって千差万別ですね。
正義とか、幸せとかって、人全部が共有できない・・・っていう
テーマ自体は私も見て感じました。
アダムとイブの話のように、人は1人ならよいけど、
2人でさえ諍いの起こるものなのか・・・って思いました。
あと、映画みながら、イラク戦争のこととか北朝鮮問題、
オウム等、色々頭をよぎりました。
でも、
映画が見る人を選ぶ・・・っていうのが
どういう意味なのか、よくわからないけど、
私個人的には、ストーリー的には残るものがほとんど
なかったかなぁ。。。
映像的には個性的だし画期的な部分が多かったので、
残ったシーンとかあるんですけどね。
投稿: し~やもん | 2004.05.25 23:44
TB思いっきりダブっちゃいました。ホントにごめんなさい。takeratta。
投稿: takeratta | 2004.05.11 00:24
麻生久美子ファンの皆様、こんにちは。大丈夫です、麻生久美子だけを目的にして見に行っても満足できます。美しいです。惚れ惚れします。
閑話休題(笑)
正直に言って、見に行くまでは眉唾なところがあるかなと思っておりました。テーマや設定はありがちとはいえ、自己満足な展開にすることなくまとめていますし、何より細部まで丁寧に作り込んでいるところに好感が持てます。
ただエントリーにも書いたように、見る人を選ぶ映画だとは思います。アニメとはまったく別の物語ということもあるので、ネットや雑誌の風評に流されず(けっこうひどい感想もある)、自分の目で見て判断されることをお薦めします。
freeplayさん、原作へのオマージュがあちこちに隠されています。アニメを知っている人ほど楽しめるようです。フレンダー、スワン、大丈夫、出てきます。よーく見ておいて下さい。
投稿: morio0101 | 2004.04.27 22:52
もう見てこられたのですか!CMで「…、キャシャーンがやらねば誰がやる…!」を聞いて鳥肌が立った者として、結構期待しています。freeplayさんと一緒で、子供の頃好きで見ていた口です。友達と新しい敵方のロボットをノートに書いたりして、喜んでました!
オリジナルのアニメ版も当時のヒーロー物としては、全体にダークな感じで、苦悩するヒーローとして描かれていたイメージがあるので、かえって今の状況の方があっているのではないかと思います。
「赤影」の麻生久美子、好きです!(^^)
今日は「世界ピンホール・デイ」ですね!これから"大人の科学カメラ"を持って、ミナミに撮りに行ってきます!
投稿: weblog244 | 2004.04.25 11:16
うーむ、アニメに思い入れありまくりですが、大丈夫かな^^;
再放送も何度も観ましたし、アニメのルナの大ファンでしたし…
(まあ、そこは麻生久美子なので問題ないと思いますが)
最初に映画化と聞いた時、ブライキングボスが唐沢寿之と聞いて、あまりの落差にかなり愕然としたり、フレンダー(犬の変形ロボ)は? スワニー(鉄也の母)は? などなど、かなり不安を感じたりもしてました。
いつ観れるかわかりませんが、ドキドキしながらその時を楽しみに待ちたいと思います。
あ、ちなみにエヴァもかなり何度も観てるので、その影響もあると聞くと、さらに気になるなぁ。
まあ、最終的には麻生久美子映画として納得するのかも^^;
投稿: freeplay | 2004.04.25 09:35
幼い頃キャシャーンを見ていました。しかし、断片的な記憶しか残っていません。自分も見に行く予定ですが、予備知識のないようなものです。内容も楽しみですが、なにより麻生久美子が楽しみでありますw
投稿: sugulu | 2004.04.25 09:10