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2004.04.18

川内倫子『アイーラ』(リトル・モア)

ハードカバーの装丁は蛇皮のような箔押しでとても立派である。176ページの重量感。紙質もよい。それでいて3800円という写真集としては極めて廉価な価格がついている。相当な売れ行きを感じさせる川内倫子の新作『アイーラ』

『アイーラ』にはさまざまな動植物の生と死が収められている。一枚一枚の写真は、常識的な意味での美しさを提示するために置かれているのではない。無秩序に選択され配置されたかのようなイメージの連鎖を見ているうちに、この混沌とした生と死のありようは、まさに私たちが日々向き合っている世界そのものであるということに思い至る。

明滅しながらたゆたう蛍、逆巻く海原、朝露に濡れるサツキの花弁、空を行く星、無数の空蝉、跳ねるクジラの尾、グランドキャニオンの虹、干からびた海亀の子、噴煙煙る火口、回遊する小魚、象の足跡、思慮深い白フクロウの黒目、砕け散ったガラスコップ、笑う山羊、母親の胎内から今まさに生まれ落ちようとする胎児……。

生と死の境界は曖昧だが厳然としてある。すべてのものは静かに訪れ、静かに存在し、静かに去る。そのことを深く思う。木村伊兵衛写真賞を受賞した『うたかた』『花火』よりもはっきりしたテーマや創作意図を読み取ることができる。「諸行無常」という誰もが知る手垢の付いたことばに、今さらながら力を感じた。

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コメント

田辺聖子を読んで関西の勉強中です : )
というのは冗談で、たまたま「ジョゼと虎と魚たち」の入った単行本を読んでいたのです。でも本の表紙は映画のフィルムから切り取ったもののようでした。きっとフォトグラファーの写真は使用料金が高いんだろうなぁ... と下世話な想像。

投稿: mi4ko | 2004.04.22 00:27

ちょっと醒めたようなカラー写真で、私には同じ色調に見えました。とてもよい造りの写真集なので、お好きな写真家ならば買って損はないと思います。

写真家のサイドビジネスといえば、近頃は中堅の映画監督と組んで、スチール担当をする人が増えてますね。川内は「blue」、佐内正史は「ジョゼと虎と魚たち」、野口里佳、森山大道、野村佐紀子、吉永マサユキが「きょうのできごと」と、目白押しです。もちろんパンフレットとは別に映画の写真集も発売しているから、双方にとって商売になるのでしょう。

投稿: morio0101 | 2004.04.21 23:53

いつもの川内さんの写真とは違った色あいなのでしょうか?とても興味があります。リンク先を見る限りでは、今までとは違うようにも見えますね。独特の透明感は伝わってきますが...アイーダ祭りって、屋台って(笑)フォトグラファーも大変だなぁ。

投稿: mi4ko | 2004.04.19 21:42

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