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2004.05.02

『君へ。』(メディアファクトリー)

作家たるもの、ドラマチックな瞬間を体験しているのは当たり前のことなのか。

この本は「ダ・ヴィンチ」で連載されていた「日本テレコム マンスリーエッセイ」が一冊にまとめられたものである。当代の人気作家37名が、コミュニケーションをテーマにして自身の体験談を語っている。これが実に劇的、というか、劇的すぎて「ほんと?」と思うような内容がいくつかあるのである。まずは煩を厭わず並べてみよう(思い切りネタバレになるので、この本をお読みになっていない方はくれぐれもご注意ください)。つまって読みにくいので、5人ずつ区切る。

鷺沢 萌:アメリカ在住の学生と遠距離恋愛。突然アメリカまで会いに行く。★
山本文緒:メール歴のこと。
北方謙三:アフリカで手品をする。★
宮本 輝:電子メールの不思議さ。
江國香織:恐怖を忘れるため、ミラノのホテルから日本の友人と一晩電話をした。★

五木寛之:地方都市の村おこし。
藤沢 周:三歳の息子が父にだけ打ち明け話があるという。
松岡佑子:亡夫の会社を引き継いだ一年後『ハリー・ポッター』の翻訳権獲得。★
田口ランディ:早朝の無言電話は痴呆老人(恋する人にかけていたつもり)からだった。★
大沢在昌:深夜のファクスへの思い。

森 絵都:ロンドン滞在中、停電で不安に思った瞬間、日本から電話がある。★
篠田節子:深夜の携帯メール。
夢枕 獏:いつも手書きで仕事をする。
角田光代:アイルランドから日本の恋人へ煙草のお礼の電話をする。★
有栖川有栖:初出版が決まったという電話と同時に、心配する妻から電話がある。★

山川健一:友人が鬱病。励まし方について。
鈴木光司:貧乏旅行中に出版社から連絡があって、ベストセラーが生まれる。★
藤田宜永:行きずりの女性からメールが来る。返事をした翌朝、死んでいた。★
村山由佳:高校時代に好きだった同級生(女)から20年ぶりにメールで連絡がある。★
北村 薫:ファクスの物真似上手の子供の成長(この話、意味不明)。

小池真理子:学生時代の先輩(男)と後輩(女)が、互いに結婚した後も秘めた連絡を取り合う。★
松尾スズキ:西暦2057年の話。
石田衣良:オフラインミーティングで若い女性と二人きりで会う。★
山本一力:直木賞へのスタート地点となったメール。
大林宣彦:新しいものに抵抗のない老父。

川上弘美:東京(50歳女)と徳島(61歳男)の遠距離恋愛。作り話?
大槻ケンヂ:メールで受ける人生相談。
馳 星周:パソコンの故障で書きかけのデータが消滅。その折、沖縄のホステスから贈り物が来る。★
高橋源一郎:母親から来た最初で最後のファクスは白紙。死を知らせる。★
唯川 恵:失恋の愚痴を女友達にぶちまける。実はその相手も失恋したところだった。★

石坂 啓:手塚治虫のやろうとした「人間ファクス」。
鴻池尚史:「打ち上げ」の後の「またやりましょう」というメール。
重松 清:単身赴任者のちょっといい話。これは「朝のリレー」のパクリか。
谷村志穂:自身の失恋を確認する映画の終わったその時間に、相手からメールが届く。★
瀬名秀明:自分の放つ一言の持つ力。

板東真砂子:タヒチに住む私と東京の若い女性のやりとり。★
乙一:大学の同級生(女)とのメール。

ほんとにそんなことがあるのか、それほどうまい具合に話が進むのか、と少しでも思ったものに★をつけてみた。日々の生活には難渋なことが多いと感じる気持ちが強いほど、この本への嫌悪感も強くなると思った。後味のとても悪い本である。変なまとめ方になった。巻頭の文章が鷺沢萌であるのも、あまりにも劇的すぎて、出来すぎである。それとも何かの因縁だろうか。

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コメント

>Muさん、Suguluさん
あちこちネットを彷徨いながら、自分と同じ価値観を持っている人を見つけると、いろいろ楽なことが多いと思うのは確かですね。もっとも私がそういうお役に立っているのかどうかはアレなんですが(笑)。

投稿: morio0101 | 2004.05.07 02:09

morioさん、Muさん
>>morio書評は、情報の海の中で、貴重な羅針盤です。
自分も同じかもw
自分の目で判断したいところですが、世の中出版物や情報が多すぎて・・・
自分の人生、ドラマチックな瞬間ってあったかなぁ 

投稿: sugulu | 2004.05.02 08:33

お早う御座いますmorioさん。
「後味のとても悪い本である。」(映画評にもよくありますね)
かねがねこの類似のセリフがとても気に入っております。ご紹介された本や映画はほとんど見たこと、読んだことがないのですが、morioさんのセリフをみるとホットします「ああ、読まなくてすんだ」。
 騙されたままかも知れませんが、morio書評は、情報の海の中で、貴重な羅針盤です。

投稿: Mu | 2004.05.02 08:15

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37人のエッセイ集。 「ダ・ヴィンチ」 #って読んだこと無いのだけれど(^^; の人気連載「日本テレコム マンスリーエッセイ」をまとめて文庫本にしたものらしい... [続きを読む]

受信: 2004.05.15 02:04

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