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2004.05.15

ワンダフルライフ

しばらく映画を観ていないと思っていた、そんな折、ニュースが今年のカンヌ映画祭の開幕したことを告げていた。今回、コンペティション部門へ選出された日本映画は、押井守監督のアニメ「イノセンス」と、是枝裕和監督「誰も知らない」の2本である。2本が入ったのは2年連続のこと。

是枝監督の名は知っていたものの、映画自体は観たことがなかった。そこでいつものレンタル店に赴き、「幻の光」「ディスタンス」とともに並べられていた「ワンダフルライフ」を借りてきた。小田エリカが出演しているという理由で(笑)。

「あなたの人生の中から大切な思い出をひとつだけ選んで下さい。」

亡くなった人々が天国に向かう前に生前の自分の人生の中から最も大切な思い出を選ぶという物語である。 彼らの新たな旅立ちを助けるというスタッフの問いかけに、死者たちは記憶の中の人生を振り返る。そして喜び、悩み、後悔し、思い出に浸りながら、自分の人生の意味や幸せとは何かをじっと考える。残すことのできる思い出はたった一つで、それ以外はすべて忘れられる。つまり選択された思い出は、その人の集大成、象徴として存在することになる。果たしてそのような重みを持つ思い出とはどのようなものなのか。

派手なシーンはない。淡々とした会話と深い思索が展開するばかりで、まことに静謐な印象を与える映画である。しかし、眼前に積み上げられるさまざまな思い出や独白(出演者はプロの俳優の他に一般人もいる)に接しているうちに、先の問いかけは当然のように鑑賞者にも突きつけられていることに嫌でも気づかされる。最も大切な思い出は何か、そしてそれを選択する自分とはどういう者なのか、私の価値観は……。地味な印象の映画は、次第に鋭く内面に切り込んできて、もはや一時も目を離すことができなくなってしまった。そして観賞後に深々とした余韻を残したのである。是枝監督の他の作品も続けて観てみようと思った。

さて本年度カンヌ映画祭のコンペティション部門の審査委員長を務めるのは、現在「キル・ビル2」が公開中のクエンティン・タランティーノである。タランティーノが日本贔屓であることはよく知られるところである。もちろんそれがパルムドール決定の大きな要因になることはないだろうが、少しだけ期待してみたりもする。

おまけ:是枝監督のCMの仕事には「サントリー・なっちゃん」「ネスカフェ・朝のリレー」「日産・モノより思い出」などがある。意外に思いながら納得した。

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コメント

>yoさん
ずいぶんと「誰も知らない」は評判がよいようです。ニュースで報じてました。タランティーノはよっぱになりすぎて、大暴れしないか心配です。

>mi4koさん
私はDVDで見ました。ビデオと両方置くような店なら、きっとあると思います。ぜひ!

投稿: morio0101 | 2004.05.19 00:16

葛西薫の参加(本の装丁?)で名前は知っておりました。貸し出ししているのかー、DVDでないと観れないのだけれどチェックしてくるなり。

投稿: mi4ko | 2004.05.16 10:22

是枝作品 いい評価してほしいですね。
今回のカンヌ タランティーノが極度のあがり症のため本番前にワインを数杯あおって臨んだ。って話がよっぱとしては泣けました。。

投稿: yo | 2004.05.16 03:10

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実は公開時にはほとんど気にしていなかったのだが、「ワンダフルライフ」@1/365*morio0101で気になり始め、「ワンダフルライフ」の紅茶が飲みたい... [続きを読む]

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