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2004.05.17

『味のなんでも小事典』(ブルーバックス)

佐竹昭広は「古代日本語における色名の性格」(「国語国文」1955年6月)において、上代に見られる色名のほとんどは、「藍」「紫」などの染料名が比喩的に用いられたものであり、純粋な色名としては、赤・黒・白・青の四つがあるに過ぎなかったことを指摘した。さらにこれら四つの色は明度と彩度の対立関係をも示していた。すなわち明(アカ)と暗(クロ)、顕(シロ)と漠(アヲ)である。古代の人々が色(光)をどう認識していたかということを示す事実として興味深い。そして日本語の形容詞として「アカシ」「クロシ」「シロシ」「アヲシ」(現代語では赤い・黒い・白い・青い)以外のものがないことからも、そうした世界の分節化と認識のありようを確認することができるのであった。

翻って日本語の感覚を表すことばを顧みると、五感のそれぞれで多寡があることに気づく。中でも味覚と嗅覚に関することばは極端に少ない。味覚についての形容詞を掲げてみると、「あまい」「からい」「にがい」「しぶい」「すい(すっぱい)」などがあるだけで、これを除くと「おいしい」「うまい」「まずい」といった評価する語くらいしか見当たらない。そこで日本語ではオノマトペ(すっきり、ふっくら、きりっ、べたべた等)や本来は別の感覚や評価を表す語(軽い、重い、上品、濃厚、まったり、貧弱)、さらに比喩表現(軽やかな音楽のような〜、澄みきった泉のような〜)などを、味覚を表す表現として使っているのである。

テレビのグルメ番組でタレントが「おいしい」「うーん」などとしか言えないところを間々目にするのは、一つは誰もが使えるような味覚専用の語彙が日本語の中に決定的に不足しているからであり、もう一つはその感覚を対象化できるだけの総合的で高度なことばの力というものが必要になってくるからである。

長い前フリである(苦笑)。ようやく表題に辿り着いた。この本は「なぜおしるこに塩を入れると甘みが増すのか」とか、「甘いものはなぜ別腹」とか、「冷えたみそ汁はなぜまずいのか」などという、味覚に関してとても気になることを解説してくれる。理屈ばかりをこねる私のような者には、「80へぇ〜」くらいのおもしろさがあった。以上。本の紹介、短かすぎ(一応、自覚あり)!!

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コメント

miuさんへ
>かかってこい!
いいんですか。おずおず(笑)。

投稿: morio0101 | 2004.05.23 19:00

Re>あら、参戦してほしかったわ。
みんな洒落よっ。たぶん最初の人、女子じゃないのかしら。
「you perv!」
なんて過激な褒め方をする弾丸ネエチャンにも慣れてるから、
だいじょうぶよん。
かかってこい!

投稿: miu | 2004.05.21 01:53

>suguluさん
ちょっとした雑学を得るためにいいと思います。某二眼を狙うついでにどうぞ。:-)

>miuさん
「女学生」というレトロな響きはさておき(笑)、門外漢の知的好奇心を満足させてくれるものとして、私もブルーバックスを愛しております。その筋の専門家が読むと、「ふっ」なんて笑われるかもしれませんが、いや、まぁ、ありがたい存在です。

私のことまで「my friend」とホトログで呼びかけてくれた彼の言い分もとてもよくわかります。「涙で袖は濡れている」なんて高らかに和歌に詠んでいても、実際に泣いているかどうか定かではありません(時代が下がるほど単なるポーズになった)。ならばはっきり「好き」と言えということでしょうね。miuさんのホトログで「I love miu」合戦になっていたのは笑いました。参戦しようかと思ったけど、洒落にならなくなると困るので、静観しました。:-P

>MUさん
昔、タモリがハナモゲラ語を造ったように、もしくはもう少しまじめに、エスペラント語のような人造言語を立ち上げるとか。語彙生成とはつまり世界をどう分節化するのかということになりますから、味覚に関する和語が少ないというのは、もともとこの国には多彩な味(または料理)が少なかったということを示唆しているのではないでしょうか。あたかも馬や雪の語彙にバリエーションが少ないのと同じように。結局、日本語で味覚を表現しようとすると、他のジャンルの語彙を援用して饒舌になるしかなさそうです。面倒なことです。

投稿: morio0101 | 2004.05.20 03:26

morioさん、前振りの方がきになりました。
 日本では雨が何十種類もある一方、モンゴルみたいに馬が数ヶ月年齢単位で呼び名が異なる、そんなことは知っていたけど、足下の味覚は気が付かなかったけど、まさしく、うーん、美味しい、それしかよう使えなかった半生に、いま気が付きました。
 どうしましょう、morioさん。なんか、こう、語彙って個人で作れるもんでしょうかねぇ。
 ギハギハな味とか、くぁくわと食べる姿が至上の味わいとか。意味不明になるね。まさしく、けほりはな味とか。
 どうすればよかろうな。
 morioさん、この件、本気です。答えはなかろうか。
 語彙生成規則って、あるのだろうか。

投稿: Mu | 2004.05.18 15:59

ブルーバックス!!!
女学生の頃、ごひいきでしたよん。ワタシは生粋の文系人間ですが、物理化学への興味は旺盛だったんで、もっぱらアインシュタインやらの、物理や天文学の分野を読みあさっていましたよ。あの薄さがちょうどいいんですよね。
味を表現する単語ってないんですよね、ないからこそ詫び寂表現が達者になるのかもね。
浪速ブラジリアンが、何で日本人は「愛してる」っていわんのじゃとストレートな疑問をなげかけるので、日本人は昔から愛という言葉を使わずに婉曲的な表現で連想させる風雅を好む人種なんだと説明したが、理解不能のようだ。涙で袖をぬらす、とか有明の月を見上げる想いとか「会いたい」という言葉を使わずにいかに会いたい気持ちを、歌で伝えるかとか、一生懸命説明しても「ふーん、めんどくさいね」
と一蹴(笑)外国人に大和の詫び寂はわかんめえ。

投稿: miu | 2004.05.18 00:21

面白そうな本ですね。
特に冷えたみそ汁はなぜまずいのかは、どうしても気になります。
キンキンに冷えたみそ汁なんて考えたくもないですよねw

投稿: sugulu | 2004.05.17 12:35

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