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2004.06.05

大沢たかおの顔を見るなり「リリイ・シュシュのすべて」を思い出して胸がざわざわした。しかし、柄本明とのやり取りですぐに映画の中に引き込まれて静かな気分になっていった。はこの二人の「記憶」を巡るロードムービーである。

優秀な成績を誇る銀行営業員の野崎陽一郎(大沢たかお)は、ある日酷い眩暈に襲われて病院に運ばれる。脳に動脈瘤ができており、そのままではいつ死を迎えるかわからない状態であると宣告される。しかも手術を受けても、今度は記憶を失う虞があるという。生きていても自分を自分たらしめる記憶を失うことは、死んでしまうことと同じではないか、そう思った陽一郎は世間との関わりを絶って孤独に生きようとする。1週間後、近所の男からアルバイトを紹介された。冤罪事件の裁判に勝訴した鳥越(柄本明)という弁護士と一緒に、東京から鹿児島までドライブするというものであった。そのドライブは鳥越が別れた妻との思い出(記憶)を取り戻すための旅だった……。

記憶を失うことは死と同じと考える野崎は、亡き妻との記憶を取り戻すことで己を回復しようとする鳥越の姿を見て生きる力を得る。旅の中で徐々に変化していく二人の様子を、鑑賞者もまた車に同乗し、寄り添う形で見つめ続けることになる。そして彼らの行動や思考を通して、「自分を自分たらしめているものは何か」ということについて深く考えさせられる。藤村志保・西田尚美・樋口可南子・南果歩・椎名桔平・仲村トオル・遠藤憲一……。脇役陣も豪華である。スタッフには相米慎二に縁の深い人々が集まっている。音楽を担当した村治佳織のギターも特筆すべきであろう。監督はNHKのディレクターとして多くのドラマを手がけてきた西谷真一。隅々までかっちりと作り込まれた映画で、安心して画面に身を委ねられた。

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