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2004.07.19

森山大道『彼岸は廻る』(現代企画室)

「写真を撮る」ためにカメラを買ったのはちょうど一年前になる。2003年6月28日の自分の日記に「GR1vを買う。嬉しい」と、まるで小さな子供の絵日記であるかのような記述が見える。人がある世界に入り込んでいくのにはさまざまな理由があると思われるが、私の場合、カメラを持つことを日々の楽しみとするきっかけになったのは森山大道の写真集『新宿』であった。

「混沌、氾濫、欲望、卑俗、悪徳、猥雑、汚濁などなどと、手あかにまみれチープな単語をずらずら並べてみると、どれもこれも皆新宿そのもので、ついぼくは笑ってしまう」と森山自身の語るところが、この写真集に描かれる新宿の姿と見事に重なっていく。そのありようは圧倒的としか言いようがなく、写真に対して古くさい固定観念を持っていた私は、とても驚きながら次々とページを手繰っていた。いまもって見れば見るほど心がざわめいてくる写真集である。GR1vを手に入れたのも、もちろん森山大道と同じカメラを使いたいという思いからである。いつものことながら、形から入る私……。

『彼岸は廻る』は越後妻有で開かれた「大地の芸術祭」をめぐる写真集である。2003年の夏にオランダ政府と文化機関の協力で実現した越後妻有版「真実のリア王」。クリスチャン・バスティアンスが新潟県越後妻有の老人たちにインタビューを重ねながら翻案した「リア王」を、そのインタビューを受けた老人たち自身が演じるというものであった。「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2003」のオープニングイベントとして上演され、大きな反響を呼んだという。この舞台を森山大道が撮影し、写真集としてまとめられた。合わせて森山の撮影した越後妻有地域のカラースナップ写真や、そこに住む人々の大切な写真が挟み込まれる。

静かな村に秘められたドラマ。それを感じさせる数々の写真。ああ、この村に行き、この舞台を見たかったなぁ。

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コメント

>Wind Calmさん
何をおっしゃいますやら。Wind Calmさんの飛行機や料理の方がずっとすごいと思っております。

>atcyさん
何の写真か定かではない(笑)といえば、「写真よさようなら」あたりでしょうか。森山大道といえばアレ・ブレ・ボケのみが喧伝されてますが、『犬の記憶』などいくつかの著作を読むと、おっしゃるように実に真っ当な写真の世界を歩んできたと思っています。私もこの写真集では花にやられました。植物の生命力をこれほど力強く絡め取っていることに、あらためて畏敬の念をおこさせます。

投稿: morio | 2004.07.20 02:02

ワタシの森山大道の洗礼は高校生の時にやって来ました。それが一体何の写真だったか定かではないほどの衝撃。(笑)
珍さんなら既にご存知でしょうが、森山大道はアバンギャルドな写真家のように見られているのですが、実は岩宮武二、細江英公、東松照明などの助手を経て、ウイリアム・クラインなどの影響を受け、ジャック・ケルアックと寺山修司の世界を融合させるという試みを成功させた、日本を代表する正統派の写真家です。森山に比べればアラーキーなんぞ取るに足らない虫けらだし、篠山紀信は明らかに異端です。
この写真集は、森山にしては落ち着いた写真が多くて、それがなにげに衝撃的でした。花の写真がとても迫力がありますね。素晴らしいです。

投稿: atcy | 2004.07.19 23:54

何かを見て感動する感性を持っていること、「形から入」っていつしかホンモノになっていくこと、その才能と成長を羨ましく思います。
(エラソーですみません)

投稿: Wind Calm | 2004.07.19 12:37

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