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2004.07.26

奥田英朗『イン・ザ・プール』『空中ブランコ』(文藝春秋)

直木賞のすべて」というサイトに出会った。おそらく多くの文学好きに早くから知られているところなのだろう。およそ直木賞に関する情報を網羅的に集積している。受賞作についてはもちろん、候補作についても詳細な記事があり、また直木賞の沿革やあまたの文学ファンによる候補作に関する書評など、とても読み応えのあるサイトである。あれだけの量のデータを集めて整理し、ネット上に美しく公開する圧倒的な熱意を少しは見習いたいものである。

『空中ブランコ』(第131回受賞作)は、奥田英朗にとって『邪魔』(第125回候補)、『イン・ザ・プール』(第127回候補)、『マドンナ』(第128回候補)に続いて4度目の直木賞候補作であった。この度の受賞は、何となく「ご苦労さん」的なニュアンスが感じられなくもない。そういう見方をすれば、次は東野圭吾の番か!?

ずいぶん前に『最悪』を読んだきりで、あの作品も筋立て勝負の小説だと思ったが、『イン・ザ・プール』『空中ブランコ』の精神科医伊良部シリーズはよりいっそうエンターテイメントに徹している。細部の精緻な描写より、物語の展開の妙やステレオタイプ化された作中人物の行動を楽しむものになっている。帯に踊る「爆笑小説」というのはいただけないし、実際そこまで笑うことはなかったけれど、これだけ暑い夏には少し軽めの読み物がいいねなどと不遜にも思う。そして市民プールではしゃぐ夏休みの子供たちの姿を目の端で捉えながら、小説を書くのって大変だなぁとぼんやり考え、プールサイドの安物臭いビーチパラソルの下で、迫り来る蚊を撃退しつつ読み終えたのであった。

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コメント

>m4
ここのところの直木賞の受賞者は、もうそれなりに名をなした人ばかりです。単に順序よく功労賞のように差し出しているという感じがします。作家の側も「やっと自分の順番か……、また本が売れるな、うっしっし」くらいにしか思っていないかも。帯は酷いね。

投稿: morio | 2004.08.01 23:47

賞の詳しい事は判らないのですが、セールスのための(本の帯の為の)受賞作をつくるのはやめて、この人最近いい感じなのよ、賞あげちゃうのよ、にしちゃえばいいのよ、作家にしてみても「コレで受賞、なのか...」と思うだけでしょう、と余計な心配をする熱帯夜の夜。

投稿: mi4ko | 2004.07.30 23:48

>marinさん
あの直木賞のサイトはすごいと思います。本を読む理由はひとぞれぞれでしょうが、読みたいと思う気持ちはきちんと昇華させてやりたいですね。
変な日本語は東南アジア方面に多そう。最近の激安スーパーに入ってくる海外製商品のパッケージにも、おもしろい表現が多数あるようです。

投稿: morio | 2004.07.30 02:23

『直木賞のすべて』見てきました。内容がぎっしり詰まっていてなかなか面白かったです。最近あまり日本の作品は読んでいないので(というか、子供の絵本以外にほとんど本を読む時間がないのです...)、勉強になりました。実は今、すごく本を読みたーい!と言う気分で、先週も図書館で自分用に3冊も借りてしまいました。(返却日8/6までに読破できるんでしょうか。)
ところで、『ドイシ生れの...』すごいですね。最近の日本は垢抜けてしまって、つまらなくなっているんじゃないかと思っていましたが、まだまだ大丈夫と安心しました。余談ですが、海外の免税店で、『ここにサーンレてください。』(サインして下さい)とヘンな活字で書いてあったのを思い出しました。

投稿: marin | 2004.07.29 00:33

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