« 鉄人28号 | トップページ | 陰陽師2 »

2004.08.02

茶の味

映画の日が休日と重なり、めったにない大混雑の中、シネリーブル梅田で「茶の味」を観てきた。ほのぼのとした佳作で、2時間半に近い上映時間を長いと感じさせないものであった。

山あいの小さな町で暮らす春野一家。催眠療法士であるノブオ(三浦友和)は、妻の美子(手塚理美)が自宅でアニメーターの仕事を再開したのを快く思っていない。同居するノブオの父轟木アキラ(我修院達也)も元アニメーターで、最近美子と仲がよいのでますます落ち着かない。長男のハジメ(佐藤貴広)は失恋直後の高校1年生、今度は転校生の鈴石アオイ(土屋アンナ)に一目惚れをし、彼女の趣味である碁を始める。小学1年生の長女幸子(坂野真弥)は、自分を見つめる巨大な自身の幻影が現れることを悩んでいる。春野家には東京でスタジオミキサーをしている美子の弟アヤノ(浅野忠信)も時々出入りする。豊かな自然とゆったりとした時間の流れる春野家の今日のできごとは……。

一本筋の通ったストーリーや無理矢理感動を押しつける仕掛けはこの映画にはない。ひたすら春野家とその周辺人物たちの小さなエピソードを積み重ねるように描くだけである。彼らはそれぞれ人に言えない、人に言うほどでもない悩みを抱え、しかし、それが決定的に人生に影響を及ぼすわけでもなく、何となく時間が解決していく、そういう日常を営んでいた。このありようこそが私たちの知っている人生そのものであろう。春に公開された行定勲監督「きょうのできごと」よりは設定、発想、映像ともに非現実の方向に振ってあるけれど、描こうとするものは同質である。強引な感動や結末はなく、詩的で曖昧で暢気でユーモラス、そして観客の想像力に強く訴えかけてくる。それが心地よい。

幸子の逆上がりの練習、ハジメとアオイの相合い傘、そしてアキラの残したスケッチブックなど、ついホロリとさせられる場面もあざとい見せ方をすることなく、さらりと描く。三浦友和と手塚理美がいい感じ。リトルテンポののんびりした音楽もきちんと世界を彩っている。何度も映し出される空・雲・夕焼け・緑がほんとうに綺麗であった。石井克人監督の作品は初めて観たが、これはとても気に入った。シネ・リーブル梅田で鑑賞。

|

« 鉄人28号 | トップページ | 陰陽師2 »

コメント

>miuさん
まぁ都昆布やカリカリ梅が好きな人もいれば、ポテトチップスやポップコーンが好きな人もいるわけで、何をよしとするかはまさに人それぞれでしょう。交互に食べたくなるのもよくわかります。

映画の日が込むというのは、映画に行く人は潜在的に多いのに、あまりにも料金が高いから普段行かないということを、如実に表していると思います。個人的にレディースデーがうらやましく、女装して行ってやろうかと考えたりもしますが、もちろんやりません。水曜日にうっかり行くと、女性専用車両に紛れ込んだような居心地の悪さを感じます。

私も最前列に座るなら、後ろで立ち見を選びますね。無理矢理座席を増やすな、どうせいっぱいになんてならないんだからと、つい意地悪なことを思ってしまいます。

投稿: morio | 2004.08.05 23:12

幼少よりハリウッド娯楽映画ですっかりアメリカナイズされてしまった脳みそには、邦画に多い詩的表現はなかなかなじめなくて食わず嫌いを決めていました。齢を重ねるにつれてわびさびが解るようになってきたので最近ぼちぼち見ていますが、やはり見終わったあとの爽快感にかけるので、次の食指はまたハリウッドに動いてしまい、食わず嫌いが直らないで困っています。
先日、久しぶりに映画館に出かけたら映画の日と重なり、嬉しいどころか満員のあおりで最前列になってしまい、大変つらい思いをしました。字幕じゃなくて良かった。定価でいいから後ろで見させてくれと思いました。スクリーンから最前列の距離って最近とみに狭くなっているような気がしますが気のせいでしょうか。狭いホールなど最後列がベストポジションなんですが…。もっと全体的にさげて、スクリーンと最前列の間の空間を有効活用する方法を検討して欲しいです。…とココで文句行ってどうするんだという感じですが。映画館に足を運んでいる人にしか解ってもらえないかと思い、ついつらつらと。失礼しました。

投稿: MIU | 2004.08.04 15:05

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/11234/1108366

この記事へのトラックバック一覧です: 茶の味:

« 鉄人28号 | トップページ | 陰陽師2 »