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2004.08.08

棒たおし

高校生があるスポーツに夢中になる。その無償の行為、無心に取り組む姿を描くだけで感情を揺らすドラマとして成り立ち得るので、このモチーフは映画やテレビでさまざまな形で取り上げられている。近年のヒット作品「ピンポン」や「ウォーターボーイズ」は記憶に新しいところであろう。私が心から愛する「がんばっていきまっしょい」(磯村一路監督)も、愛媛の高校の女子ボート部を鮮烈に描く映画として深く心に残っている。

「棒たおし」は、かつて運動会でよく見かけたこの競技を中心に据える男子高校生の物語である。2002年の城戸賞を受賞した松本稔の脚本を、前田哲監督が映画化する。主演とその取り巻きは男性アイドルグループLeadとFLAMEのメンバーが務める。でも誰が誰やらよくわからなかった。皆、同じに見える(たぶんそれは私の衰えた脳力のせいだとも思うが)。結局、最初から最後までだらしなくのびきった金太郎飴のような一本調子で終わってしまった。

ということを最初に書いてしまうのは、この映画には上記の三つの秀作にあった、朴訥だけど真実を見せるような清冽な演技、そして劇中ながらその競技に深く入り込むことで確実に成長する姿といったものに、ついぞ出会えなかったからである。なんだかグラビア誌に踊るようないかにもアイドル然とした定型化したパターン(顔・ポーズ)が画面に切り貼りされているだけで、そこからはちっとも血も汗も涙も感じられない。工業科に馬鹿にされている普通科の生徒が、運動会での棒たおしで見返すというわかりやすい勧善懲悪を描くわけだから、持っていき方によっては絶大なる観客の共感(そして爽快感)を得られるはずなのだが、あまりの学芸会ぶりに最後まで醒めた目でしか見ることができなかった。これでは単なる格好をつけたアイドルプロモーション映像でしかないだろう。

キャッチコピーで「卓球、シンクロナイズドスイミングの次は棒たおしだ」というくらいなら、内容面でもきちんと受け継ぐものを見せてもらいたかった。意味も欲得もなく何かに熱中する若い人の姿をもっとストレートに見せてくれたら、それだけでいい映画になると思うのだが。

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