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2004.08.12

遊園地と針穴と夏休みの宿題

リニューアルオープンした香川県のニューレオマワールドは、予想以上の人々で賑わっていた。アトラクションの多くは過剰な刺激よりもわかりやすい楽しさが優先されているので、若い人たちよりも小学生くらいまでの子供を連れた家族が目立つ。ジェットコースターや急流滑り、3Dシアターなどを巡りながら、ピンホールカメラでカラフルな園内をぽつぽつと撮影していた。

遊園地とピンホール写真といえば、先頃刊行された徳永隆之『Amusement Park』(新風舎)あたりが代表的なものであろうが、あの写真集では少し寂れた遊園地とノスタルジックな絵を生み出すピンホール写真の相性の良さを打ち出すように撮影がなされている。そこには当然のように人はいない。同じ題材を同じようなトーンで撮影してもおもしろくないし、何よりピンホールで人を撮るのが意外性に満ちていて楽しいと思っているので、できるだけ遊興施設だけでは撮らないようにしていた。当然、人が集まる場所でカメラを構えることになる。

この日はZERO2000を使っていた。木の箱にしか見えないカメラがしっかりとした三脚の上に載っかっているわけだから、こちらに気がついた人はちょっと不思議そうな顔をしながら通り過ぎていく。何人かからは声もかけられた。そしてある四人家族が近づいてきた。見たところ、私とほぼ同世代の父親と母親、その後ろで少し恥ずかしそうにしている男の子の兄弟が二人。父親が口を開く。

「これはピンホールカメラですか」「はい、そうです」

聞けば、上の男の子が小学校の夏休みの自由研究でピンホール写真をやりたいとのこと。いくつかの本で調べてみたものの、今ひとつよくわからないし、教えてもらえるような人もいないので困っていると、これは母親が説明してくれた。それでほんとうに少しだけだけれど、知っていることを話した。なんだかとても嬉しそうにしてくれるので、こちらの気持ちも軽くなった。別れ際、父親が手持ちのビデオカメラで私のピンホールカメラを映していた。男の子は、やっぱり最後まで少し恥ずかしそうにしながら、それでも私のカメラをしっかりと見つめていた。

フェリーの甲板「うまく写真が撮れて、いい自由研究になるといいな」と思ったのはもちろんであるが、いつも以上に熱心に話をしたのは、他でもない、自分の娘が自由研究の課題にピンホール写真を選んでいるからである。他人事とは思えなかった。そして「自分は何を夏休みの宿題にしたのだろう」と遠い記憶をたぐり寄せようとするのだけれど、それは淡い霧の向こうで霞んでしまってうまく思い出すことができないままである。

写真は帰りのフェリーの甲板で娘と一緒にピンホール写真を撮影しているところ。綺麗な海と空が撮れただろうか。

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コメント

>もりさん
情報、ありがとうございます。もちろん知りませんでした。おもしろいことをする人がいるんですね。せっかくだから、もっと多くの人の知るところになればいいのにと思います。そのうち、もう一つのピンホール用ブログで取り上げてみます。

投稿: morio | 2004.08.16 00:12

こんなのを見つけたのでおしらせ。(既にご存知かな?)
FM愛媛「はりあなへんろ道」
http://homepage3.nifty.com/uncafe/henromiti/henromiti.htm
針穴写真がすごく神秘的に見えてきます。

投稿: もり | 2004.08.14 22:00

>m4
針穴の魅力は意外性に尽きるのではないでしょうか。そのわからなさが何度もシャッターを切らせるのだと思っています。訳のわからない写真が多いことの言い訳ではありません(笑)。
娘は呆れながらも、まだつきあってくれます。あと何年かと考えるとせつないので、考えないようにしています。
左右反転と上下反転は……、なんでだろう。そういわれると不思議ですね。ただ二眼の反転と鏡の反転は違いますよね。暑いからこれ以上考えられない(と逃げておく :-P)。

投稿: morio | 2004.08.14 14:26

大人じゃなくて、子供の科学が楽しかった事を思えば、今の子供にとってもカメラやミジンコや鉱石ラヂオは楽しい筈よね。ピンホールだって原理が判らなくても撮る事は可能だし、原理が判ればもっと楽しくなるのだろうし(嗚呼、私はあまり原理を判っていないかも...でも二眼のファインダーが左右反転なのを見れば、そういうとのなのだなぁと...泥沼)
きっと娘さんは大きくなったときに、夏休みにピンホールしたことや、父親が「もはや普通ではないカメラ」を大量に持ち歩いていた事を思い出しつつ、カメラを持つのではないでしょうか。

ところで、鏡も左右反転ですが、何故上下反転ではないのでしょう?

投稿: mi4ko | 2004.08.13 19:06

>タエさん
いつまで一緒に遊んでくれるのか、それが一番の心配時です(笑)。

>Muさん
ありがとうございます。大きいのは身長だけです。学年全体でも5番目までには入っているようです。私の年齢はそれなりの、いや、見事なまでの中年です。

投稿: morio | 2004.08.13 01:25

読後感の爽やかな記事ですね。
夏休みの宿題とピンホールカメラ、よいですね。
大きな娘さんがおられるのですね。
morioさんのお歳がわからなくなった。

投稿: Mu | 2004.08.12 07:33

娘さんだ! 写真に興味をもってくれているのですね。
しかもそれが針穴とは素晴らしいです :)
それにしても窓に映り込んでいる二人の姿と影。
とてもとても素敵な一枚ですね。

投稿: tearoom | 2004.08.12 02:01

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