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2004.10.29

森山大道 in Paris

先日の椎名誠のレクチャーに引き続き、11月14日には同じ彩都メディア図書館で森山大道と石内都の対談がある。私には神様の降臨ともいうべき機会で、興奮を禁じ得ない。

その森山の映像作品「=森山大道」については、テレビ放映されたものを見たあと、予定調和的にDVDを手に入れて何度も見返している。新宿のあちらこちらに出没し、電光石火のごときノーファインダー・スナップを駆使する技は、何度見ても唸るばかりである。写真家の仕事ぶりは、紙面に定着した写真や本人の記した文章でしか接し得ないのが普通であるから、とても貴重なものであると思う。そして2004年春にまた新たな映像作品がリリースされた。今度のものは、昨年末にパリで開かれた「DAIDO MORIYAMA展」をめぐるドキュメンタリーである。

森山大道 in Paris」と題されたこのDVDには、2003年秋から2004年初めまで、パリ・カルティエ現代美術館で開催された個展の制作から完成までの全過程を収める。また森山本人に加え、細江英公、荒木経惟、中平卓馬、ウィリアム・クラインらのインタビューがある。さらにパリ滞在中に行われた撮影の様子もうかがうことができる。見応えのある60分である。

パリの街角に飾られる巨大な口唇のポスター。日本というコンテクストを離れて存在するその生々しさは、写真が視覚という言語によりかからないメディアであることを強烈に意識させ、極めて越境的で挑発的である。そして完全に自立している。展覧会場のレイアウトも森山自身が納得するまで練り上げられたもので、あの心がざわざわと搔き立てられるモノクロ写真が、圧倒的なスケールで展示されている。あれを現地で見られる僥倖に与りたかったけれど、望むべくもないことである。日本でもぜひ開催されることを強く願う。

もちろん欧州での森山の評価は、このDVDだけでは知ることができない(そもそも日本の写真家の何人が欧米で知られているのだろう)。ただアンリ・カルティエ・ブレッソンの国の人々に「森山大道という名の鋭い楔」を打ち込んだことを信じたい。

蜷川実花の9月分の日記に、森山のDVDを買ったという話が書いてある。ただそれだけなんだけど。

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コメント

>marinさん
GR1シリーズは紛う方なきコンパクトカメラです。ライカ用に作り直されるほどの優秀なレンズが付いているので、それなりの値段がするのですが、見た目は本当にただのコンパクトカメラです。森山大道に憧れて、同じこのカメラを買ったというミーハーな私です(笑)。

森山大道は文章もとても巧みに綴ります。河出文庫から出ている『犬の記憶』『犬の記憶 終章』あたりが手に入りやすいです。写真集は断然『新宿』をお勧めします。ちょっと値段が高いので、図書館などで御覧になってみて下さい。

本も写真集も、そして美術館も、気楽に楽しむというくらいの軽やかさがいいですよね。

投稿: morio | 2004.11.01 18:06

morioさんのところで目にするようになるまで、恥ずかしながらリコーのGR1というカメラのことは全く知りませんでした。重くて本格的な一眼レフを想像していたのですが、28mmレンズのコンパクトカメラ(と呼んでいいのかわかりませんが)だったと知って驚いています。morioさんの数々の写真もこのカメラで撮られたものだったんですね。

先程、森山大道オフィシャルサイトを見てきました。バイオグラフィだけでも読み応えがありました。ギャラリーで見られるたくさんの写真、古いものにはある種の恐ろしさを感じ、パリの写真には唸らされました。

私の住むところには細江英公氏が館長を務める写真美術館がありますが、すっかり写真モードに入ってしまったこの秋、行ってみようと思いました。

投稿: marin | 2004.10.31 16:04

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