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2004.10.31

バーバー吉野

放課後の誰もいない教室で、好きな女の子のリコーダーの匂いをかぐ。

この描写一つで「バーバー吉野」という映画を許せそうな気がする。

とある山あいの田舎町には古くからの言い伝えがあって、男の子は全員が「吉野ガリ」という髪型にしなければならなかった。町唯一の床屋「バーバー吉野」のおばちゃん(もたいまさこ)が刈るその奇妙な髪型の伝統は、100年以上も続いているという。ある日、誰一人として「吉野ガリ」を疑問に思っていないこの町に、東京から茶髪のかっこいい転校生がやってきた。クラスの女子は彼に夢中である。それを見た「吉野ガリ」の少年たちに、ある思いとたくらみが湧き上がってくるのだった……。

「バーバー吉野」は、伝統の名の下に自由や人権を弾圧する権力者(大人)に対し、自らの権利を獲得しようと戦う子供たちの物語である、と言ってしまうと、この映画にはかっこよすぎる説明になる。正しくは、なんとかして女の子にもてたい男どもが、日夜発情して大騒ぎする物語というところであろう。その大人と子供の攻防の象徴が「吉野ガリ」という変な髪型なのであった。一種の少年たちの精神的成長譚とも言えようが、やはり女子の気を惹きたい男どものもがく姿を描く映画という方がふさわしく思われる。だからこそ説教臭くなく愛すべき佳作になっていると思う。

小学校高学年の男子がやりそうな「おバカな行動」が続出する。冒頭のリコーダー・ネタもその一つだが、なんだかニヤニヤとさせられることが多くて、それがなんとも心地よいほのぼの感を生んでいる。物語の鍵を握る東京からの転校生の描き方が薄っぺらいとか、反体制派(子供)が是、守旧派(大人)が悪というわかりよい対立関係を強調しすぎるとか、映画の中には生硬な部分も散見される。しかし、総体的にはとても楽しめる映画になっていると思った。第13回PFFスカラシップ作品として製作された、荻上直子監督の長編デビュー作である。今後に期待したい。

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コメント

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ほのぼのしました。この映画にとっては吉野ガリが小道具として重要でしたが、別に丸坊主でも五分刈りでも虎刈りでもなんでもよいのです。要するに伝統とか風習とか言い伝えとか制度の象徴として、髪型があるだけですから。それを一種のファンタジーに置き換えたところが、この映画のミソでしょう。

是枝ナイト、いいですねぇ。「幻の光」と「ディスタンス」、まとめていったのでしょうか。らんだんのまこしゃんもかの地の映画祭で「誰も知らない」を観たか、観るかというところです。すばらしきかな。どうぞお楽しみあれ。

投稿: morio | 2004.11.02 18:34

待ってました。最近DVDが出て、行く先々で逢うのです。思わず買ってしまいそうになるのですが、目的があるので我慢していました。ちなみに目的はamazonで購入しました。便利だなぁ、監督別のジャンル分けがあるし。明日の夜は是枝ナイトです : )

さて、本題ですが(長かったね)あのフライヤーの雰囲気の出た作品のようで何よりです。「吉野ガリ」ほど個性的ではありませんが、ワタシが通った中学では男子が「丸坊主であること」を強要されておりました。子供たちの悲痛な叫びを目の当たりにしていた事を思い出させてくれます。坊主の場合、カッコイイ男の子はそれなりにカッコイイのですが、吉野ガリでは難しいでしょうしねぇ...それ故の葛藤なのか。同じ葛藤を抱えているのはふかわりょうか、スネオヘアーか。話がずれてきた。

投稿: mi4ko | 2004.11.01 21:38

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新しく個人のブログを作ったことだし、過去に書いた映画のことについてちょっとだけ詳しく書いて見ます。バーバー吉野は今年見た映画で1位か2位かというくらいのお気に入... [続きを読む]

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