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2004.10.16

イン・ザ・カット

若い頃のメグ・ライアンが好きだった私には、ここ何作かの「無理矢理ラブコメする姿」は、正直言って見ていて辛いものがあった。むろん老年や中年のラブコメディもある。しかし、メグ・ライアンのそれは、どう見ても「恋に恋するうら若き乙女」もしくは「美しき結婚に憧れる女性」の物語である。大学生には小学生を演ずることはできない。その種の違和感をどう精算するのか。はたして「ラブコメの女王からの脱却」を目指す彼女が選択したのは、女性性を全面的に強調したサスペンスであった。

タイトルの「イン・ザ・カット」は公式サイトの解説によれば、「ギャンブラーが、他人のカードを盗み見るときに使う言葉。意味は隙間、隠れ場所。語源は女性性器。転じて、人から危害を加えられない、安全な場所のこと」という意味を持つスラングであるという。とすると、このタイトルは実に見事にこの映画の内容をトレースしている。物語の端緒はフラニー(メグ・ライアン)の覗き見であり、殺人事件発生後は、物理的に隠れ家たる住居から引き出され、心理的には深く封印されていたとおぼしい性的な情熱をさらけ出す。そして凶悪な渦に巻き込まれながらも、最後には安息の場(男である……)を得るのである。この共鳴する関係はうまいと思う。主題曲の「ケ・セラ・セラ」も象徴的に響く。

結局、「イン・ザ・カット」はサスペンスらしい事件の謎解きよりも、ヒロインの内面的な変貌を描くことを主としている。したがってサスペンスとしては物足りない憾みがある。しかし、それもメグ・ライアンの新境地開拓のためとあらば、致し方ないことかもしれない。この映画が注目される最大の理由はそこにあるはずだから。ただメグ・ライアンほどの人生経験を積んだ女性がこの役を演ずると、どうしても新境地開拓というより単に自分の経験をさらけ出しただけという感じがしてしまう。難しいものである。

こうしてメグ・ライアンが濡れ場に挑んだ映画として記憶されるであろう本作は、荒木経惟の言う「メグ・ライアンのおっぱいが最近はやりの巨乳よりずーっとエロい」ということばに尽きるのかもしれない。もっともこの作品を女性が見た場合、どういう受け取り方をするのかということは気になる。結末には少しだけ救われたが、血生臭い描写があちこちにあって、苦手なものには辛い絵となることも言い添えておこう(私は目を細めて見た)。監督ジェーン・カンピオン、制作総指揮ニコール・キッドマン。なおサスペンスゆえにストーリーの紹介は極力控えることにした。あしからずご了承願いたい。

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コメント

>marinさん
サスペンス風味というのであれば、十分感じられると思います。御覧になってどうでしたか。「喧嘩乳」の検証、どうぞよろしくお願いします。もちろん映画自体の感想も。

投稿: morio | 2004.10.18 23:46

ストーリーやプロットは所詮「作り物」なので、まぁそれでもいいことにします。要は、サスペンス風の空気が味わえれば。部屋がごちゃごちゃ?期待できます。
明日早速借りに行きます。「仲直り」してるのかどうか、確かめねば。

投稿: marin | 2004.10.18 00:26

>miu
巧妙に逃げてるのに。「おっぱい」と言ったのはアラーキーだし、「女性性器」と言ったのは公式サイトです。興奮してないで、早く寝て下さい。ところで、「イン・ザ・カット」でのメグ・ライアンのは、喧嘩してませんよ。仲直りしたのかな(なんじゃ、それ)。もっともどれくらいからが仲悪いと認定してよいのか、ウブな私にはよくわかりません。

>m4
監督も女性です。「ピアノ・レッスン」の監督です。当初はニコール・キッドマン主演で考えていたそうです。これはこれで壮絶な感じがします(笑)。

>marinさん
あまりサスペンスものとして期待されると、仕掛けが少なくてがっかりするかもしれません。良くも悪くも人物描写第一の映画だと思います。部屋についてはごちゃごちゃしていたような記憶が(かなりあやしい)。

投稿: morio | 2004.10.17 23:36

サスペンスやミステリー好きの私としては、「メグ・ライアンなる者」やジェーン・カンピオン、ニコール・キッドマン抜きにしても観てみたい作品です。
ご紹介の公式サイトの雰囲気はなかなかよいと思いました。主人公が小綺麗過ぎる部屋に住んでいるようだと興醒めですが、生活の匂いがしてきそうな映像もちらっと垣間見ることができ、ちょっと期待しています。

投稿: marin | 2004.10.17 16:16

製作総指揮がニコール・キッドマンという点に興味があります。ええ、彼女のお尻はオーストラリアの宝でした、おっぱいにはあまり記憶がありませんが...て、そっちの方面に話が向かうのは仕方ないとして。
名前からして監督さんも女性なのでしょうか? だとしたら女性から観ると印象が変わるかもしれませんね。心理描写とともに、熟練の女優の観られかたも考慮の上なのでしょう。しかしメグ・ライアンのおっぱい記憶にないなー 喧嘩乳だったのか。もともと巨乳にはエロを感じないが、アラーキーのような感想を抱くのかどうか、ちょっと愉しみ(でもレンタル屋さんは苦手なのでwowwow配給を待つ)

投稿: mi4ko | 2004.10.17 11:10

ちんさんの文章でおっぱいという表現を見るとは思わず。
なんだか興奮しました。明日は早いのにどうしてくれるんですか。

「ハリウッド女優とおっぱい」の話の始めるともれなく夜明けまで話が弾みます。毎回形が違う、アンジェリーナー・ジョリーや、最後に見たメグの「喧嘩乳」(離れている)の件でも、かなり熱くなった記憶があります。お会いした折りには是非生声で「おっぱい」という言葉を連呼して欲しいです。楽しみが一つ増えました。

投稿: miu | 2004.10.16 22:37

>Muさん
いつもありがとうございます。そうですね、「メグ・ライアンなる者」を気にしなければ、完結した世界を持つ物語として成立していると思います。でも、やっぱりメグ・ライアン、ついでに彼女の出ている旧作ラブコメを御覧になると、より深く(?)見ることができると思います。なおDVDはすでに発売されています。レンタル店でも並んでいます。

投稿: morio | 2004.10.16 21:31

morioさん、いつもながら、冴え冴えした記事ですね。
ただ。質問。
私は、俳優、女優、シンガー、作家をほとんど知らないから、作品のなかでしか、物がみえません。

で、すると、この場合、女優情報ぬきで、この映画は、その世界だけで、うまく行っていると考えて、よろしな。

と、質問してもしょうがないか。
DVDがでたら、気を付けて、見ておきたいです。

それにしても、冴え冴えとした記事。
morioさんの性別年齢人品骨格すべて不明でも、よろしい内容です。
うん、朝から記事読んで、得しました。

投稿: Mu | 2004.10.16 10:42

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