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2004.11.21

華氏911

第57回カンヌ映画祭のパルムドール受賞作品。マイケル・ムーア監督の華氏911

私の苦手な戦争も血も死も出てくる映画なので、まったく見る気がなかったし、実際に劇場に足を運ぶこともなかったのだけれど、レンタル店でパッケージが壁のように並んでいるのに騙されて(!?)、つい手に取ってしまった。案の定、生理的に受け付けない描写シーンに思わず目を背けることになった(イラクでの戦闘はつらいものが……)。しかし、観賞後の印象はそれほど悪いものではない。

おそらくそれは世に喧伝されるほどの政治的なプロパガンダを感じなかったからということよりも、表現者としてのムーアの純粋さやひたむきさに心をうたれたからといってよい。ムーアの個人的視点によって描かれた本作は、ドキュメンタリーであってドキュメンタリーではない。それを偏見や誤解に満ちていると批判するのはたやすい。「華氏911」を欺瞞に満ちた映画だと決めつけた時点で、この作品はするりと身をかわして逃げ去るばかりである。

私たちは中立とか公平とか穏当という「世間の良識」をひとまず棚上げし、ムーアの語るところに静かに耳を傾けるべきであろう。それは思想や内容ではない。生きる姿勢といってよい。偏っていようと一面的な見方であろうと、自分の感じたままに自分の考えたことを自分の文法と言葉できちんと形象化する、その彼の信念と方法論こそが大切であると思う。私はその点において、「華氏911」は凡百の映像作品と一線を画していると思う。中立公平を標榜しながら、まずいことや肝心なことを何一つ伝えない某国のマスコミの酷さの方が、よほど偏向している。人畜無害どころか、極めて有害。そして無能。タランティーノのパルムドール決定に至る判断は、この映画の思想内容や刺激的な映像に対する評価ではなく、表現者ムーアの姿勢に対するものであったことを強く信じる。

ジョージ・ブッシュは再選を果たした。ゴアに勝った時のような裏事情があるのかどうか知らない。しかし、非ムーア的な考え方をする人々(=ブッシュ支持)がかの国には多くいることもまた事実である。ここから先は私たちの問題である。

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コメント

はやっ!(笑) >手元には「華氏451」のDVDと文庫本が。
文庫を読みながらDVDを見るのです!(爆) >どうしましょうか

投稿: ぽた郎 | 2004.11.24 01:39

>ぽた郎さん
ということで、手元には「華氏451」のDVDと文庫本が。本を読み終えるまでとても映画を我慢できそうにないのですが、どうしましょうか(人任せ、笑)。

>み
政治的な立場でこの映画を観るならば、「反ブッシュには逆効果だ」という人もいるので、なかなか難しいところですね。あとは見た人がそれぞれ判断するという当たり前のところに落ち着くしかなさそうです。

投稿: morio | 2004.11.23 02:16

ゴミを片づけて婉曲的に行政を揶揄する日本の突撃番組がありましたが、こっちの国は人の命がかかっています。多少やりすぎは否めませんが、米至上主義を米人自ら否定してくれたわけで、それだけで私はたいしたもんだと思います。

投稿: miu | 2004.11.22 17:59

なんと,「華氏451」DVDで復活ですか! 知らんかった・・・。私も買おうかな。(いつ見れるかといのは別にして,これはコレクションものですからね・・・。)(^^;
451はブラッドベリの原作を読んでからトリュフォーの映像を見た方がよいですよ〜。原作はハヤカワ文庫から出てます。

あ,ちなみに,私はマイケル・ムーアが嫌いなわけじゃ決してなくて,「よりによってなんであんなタイトルなの〜?」とその点だけにフンガイしてるだけです。911の方もそのうちレンタルで見よっと。

投稿: ぽた郎 | 2004.11.22 09:31

>Wind Calmさん
何をおっしゃるうさぎさん。背を押していただき感謝します。政治的な部分に疎いので、きっとたくさん見落としていると思います。また教えて下さい。

>ぽた郎さん
その後、調子はいかがでしょうか。ブラッドベリのことは知識として持ってはいたのですが、映画はもとより原作すら読んでいないので、黙っておりました。ぽた郎さんがお勧めならとさっそくアマゾンで検索すると、ちょうど先月1500円で再発売されたばかりでした。この値ならもちろんゲットです。明日か明後日には届くようなので、観たらまた感想を書きたいと思います。

投稿: morio | 2004.11.22 01:25

「華氏911」,私も食わず嫌い派です。私の場合,その理由は明確でして,ブラッドベリの「華氏451」を愛してるから。このちゃっかりあやかり型の悪趣味なネーミングはあんまりでしょう〜・・・。ブラッドベリ本人も憤慨しているそうです。ちなみに「451」の方は冒頭,イギリス(と思われる)田園風景に懸垂型のモノレールが登場します。それがまさにSF的で美しい・・・。タルコフスキーの「惑星ソラリス」に比肩する叙情派SF映画です。ビデオ屋でもなかなか見かけませんね〜。「911」が流行ってるだけにムカつく〜。(^^;

投稿: ぽた郎 | 2004.11.21 02:27

参りました。おっしゃるとおりです。どうして私には、鑑賞力も文章力もないんだろう・・・

投稿: Wind Calm | 2004.11.21 01:15

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