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2004.11.30

町田康『猫にかまけて』

以前、愛猫を動物病院に連れて行った時、待合室で手に取った猫雑誌に町田康がエッセイを書いているのを読んだ。飼っている三匹の猫のことを「三人」と呼びたいという内容のものだった。書き捨ての雑文かと思っていたら、連載がまとめられて立派な単行本として刊行された。これが実に素晴らしいのである。

およそ世のペット本の大半は、単なる自己満足的な愛情表現に終始し、たとえ犬好き猫好きであっても、あまり共感できるものではない。そうした溺愛するものへの直接的な感情を出されても、こちらとしては困惑するばかりである。

町田のこの本は、いつもの町田節で自虐的に「猫にかまけて」いる自己を軽やかに対象化しながら、飼い猫や捨て猫との戯れを通して、彼と彼の妻の猫への深い愛情が行間から(いや本全体から)滲み出るような一冊になっている。写真もすべて二人の手になる。面白おかしいエピソードがあれば、哀しい別れの話もある。これはエッセイでありながら、極めて良質のドキュメンタリーであるといってよいだろう。手に汗を握りながら、猫の命と町田一家の生活の行方を見守っている自分に気がつく。そして目に霧がかかる。

猫好きには必読である。このブログで読んだ本の感想を愚にもつかぬことばで書き散らし、「別にそれを他人が読もうが読むまいがフフフン」なんて思っていたのであるが、『猫にかまけて』はぜひとも読んでもらいたいものだなぁと、めずらしくまじめに考えている。

なお町田一家と猫の関わりは、彼のサイトの日記で読むことができる。

Official Machidakou Web Site

『猫にかまけて』で活躍しているゲンゾーが、11月2日に亡くなったとのこと。冥福を祈りたい。(講談社、2004年11月)

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コメント

>微温いペット本など束になっても敵わない
ほんと、そうだと思います。
猫好きとか犬好きとかそんなつまらない話ではありませんよね。
大賛同!

投稿: fuRu | 2004.12.26 11:39

>fuRuさん
コメント&トラバ、ありがとうございます。『猫にかまけて』は、私の中で傑出した存在になっています。微温いペット本など束になっても敵わない、とてつもないパワーを持った本だと思います。愛に溢れています。

投稿: morio | 2004.12.23 16:37

はじめまして。
町田康の本で号涙。
なかなかありません。
TBさせていただきます。

投稿: fuRu | 2004.12.22 18:51

>marinさん
騙されたと思って読んでみて下さい。本当に騙されたと思っても恨まないで下さい(笑)。

投稿: morio | 2004.12.02 01:29

こんばんは。
morioさんがそこまでおっしゃられるのなら、読んでみましょう! 

投稿: marin | 2004.12.01 22:23

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「猫にかまけて」 著:町田康 出版:講談社 定価:1680円(税込み) → amazon 自分は猫が好きである。 どのくらい好きかというと、例えば往来をしてい... [続きを読む]

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