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2004.11.07

笑う蛙

平山秀幸監督の代表作といえば、原田美恵子の凄みのある演技が強烈に印象に残る「愛を乞うひと」であろうか。思えば昨今社会問題として顕在化している児童虐待を、あれほどまでに明確に映像化している映画は珍しいと思われる。もっとも大作、秀作ではあっても、描くものがものだけに後味のあまりよくない映画ではあるのだが。好き嫌いというレベルでいうと、むしろ平山監督の映画では牧瀬里穂が好演した「ターン」や、「笑う蛙」でも主役を演じた長塚京三の「ザ・中学教師」がおもしろかった。あまり肩に力の入りすぎない娯楽作である。

笑う蛙」は藤田宜永の『』を原作とするもので、主演は長塚京三と大塚寧々である。これをそのまま映画化すれば、たいそう深刻かつエロティックなものになったと思う。でもこの映画ではそうならなかった。

銀行の支店長を務める倉沢逸平(長塚京三)は、バーのママ(南果歩)に入れあげた挙げ句、マチ金に多額の負債を抱える。その埋め合わせとして銀行預金を横領するが、すぐに発覚して指名手配されることになった。逃走を重ねてたどり着いたのは、妻、涼子(大塚寧々)の実家の持つ別荘だった。涼子は涼子で平凡な夫婦生活に飽き飽きしており、夫の不祥事に乗じて家を処分し、別荘に移り住んでいた。思わぬ場所で鉢合わせをする二人。逸平は涼子に匿うことを願い出るが、すでに新しい恋人(國村隼)のいる彼女は自首を勧める。そして涼子は彼が離婚届に判を押すことを条件に、一週間だけ匿うことを約束した。かくして逸平の納戸生活が始まった。外界と彼を繋ぐのはわずかに空いた節穴のみ。そこから見える世界は……。

ギャグである。コメディである。精神的に成熟しない「大きな子供」ばかりが集まったかのような家庭劇が展開される。それぞれがそれぞれの立場から勝手なことばかり言ったりしたりする。そこがおもしろおかしいのだ。シリアスな場面はすべてはぐらかされて変なところに落とされる。なぜか心地よい。覗き見しながら妻への怒りを燃やす逸平(そんな資格なし!)の姿や、全員が出揃ってからのちぐはぐな攻防が見所であろう。こういう間の抜けた映画(わかりやすい感動などどこ吹く風)、好きである。映画を見終えると、「虜」という原題が「笑う蛙」という漫画的なものになったことも納得できよう。

典型的なB級邦画である。劇場公開時に見逃し(あっという間に公開終了)、レンタル店にも並ばないこの作品が、地上波で放映された。こんなこともあるのだなぁ。

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コメント

>しきはんさん
おそらく人物関係の設定などの枠組みを借りただけということだと思います。全然シリアスなドラマではありません。ちょっとB級過ぎて、レンタル店にも並んでいない映画ですが、もし見かけることがあれば、一度お試し下さいませ。

投稿: morio | 2004.11.09 19:43

え???絶句....
あの小説がギャグ??コメディ??
全然想像ができません。
逆に興味をそそられました。

投稿: しきはん | 2004.11.08 14:36

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