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2005.01.31

MASK DE 41

最近はPRIDEやK1などの「一見本気風総合格闘技」が大人気で、定期的に開催される大会は必ずテレビで放映されているし、大晦日にいたっては紅白歌合戦の存在を脅かすほどにまでなっている。一方で昔ながらのプロレスはといえば、どうも調子が思わしくなく、老舗の新日本プロレスをはじめとして、ほとんどの団体がアングラ的な存在に堕ちてしまったようである。少なくとも昔からのプロレスファンである私にはそう思えてならない。スポーツとして結果が報じられないのは、プロレスもPRIDEもK1もみな一緒で、結局は同じ穴の狢であることが透けて見えているのだがなぁ。

ゴールデンタイムに猪木や馬場が吠えていた頃と比べると、ずいぶん風向きが悪くなってしまったものだ。なんとも大仰で時代錯誤を思わせる結構は、あたかも地球環境の動向に対応できずに絶滅した恐竜を見ているかのごとくである。もっともそんなプロレスが大好きで、私としては離れることができないのだけれど。プロレスは格闘技ではなく、鍛え上げた肉体(中にはまったく鍛えていないレスラーもいるが)を使った総合舞台演劇なのである。いつも同じ人が勝つのは、俳優の格で配役が決まってくる劇団と同じである。八百長ではなくあくまでも演出。必要なのは真の強さではなく、強いと思わせる演技力。還暦を過ぎたジャイアント馬場は、死ぬまで引退しなかったもんなぁ。ほとんど無形文化財、人間国宝ものである。

41歳の厄年を迎えた倉持忠男(田口トモロヲ)は、会社から突然のリストラ宣告を受ける。妻の恭子(筒井真理子)は家庭よりフラワーアレンジメントに入れ上げているし、二人の娘、春子(伊藤歩)とハルカ(蒼井優)もそれぞれの遊びに夢中になっている。この家庭崩壊の危機に忠男のできることは何もなかった。ただ一つ、若い頃から情熱を傾けてきたプロレスを除いては。忠男はプロレスファンが夜な夜な集まるカフェの仲間とともに、退職金を元手に夢だったプロレス団体を立ち上げることを決意した。プロレスへの情熱と家族への愛を武器に、ついに彼はリングに立った。忠男の第二の人生の首尾はいかに……。

「気合いだぁ〜」のアニマル浜口に弟子入りし、この映画のために肉体改造を施した田口の熱演がすべてである。確かにプロレスラーにしては貧弱だが、ありえないほどの貧しさではないところに感心した。そこをクリアすれば、あとは演技力だけである。上にも述べたようにプロレスラーに必要なのは真の強さではなく、強いと思わせる演技力である。田口の演技力に問題のあろうはずはない(もっともここでは強さは必要なかった)。中年の悲哀と孤独と現実を見事にプロレスの中に昇華していた。結末部分の「祝福されないロッキー状態」は笑うしかなかったけれど。脇役陣も妙に豪華で松尾スズキや小日向文世、片桐仁らが思い入れたっぷりに怪演している。惜しむらくは個々の場面の描き込みが今ひとつ(説明不足でわかりにくい箇所多々)で、主筋への求心力を欠いて上滑りしているように思われた。もっとも基本的にノリ重視のホームコメディである。明るい未来を想起させる結末に救われるだろうし、この映画はそれで必要十分だと思う。

MASK DE 41」は四年前に撮影完了していたものである。諸般の事情で公開が2004年まで遅れたとのこと。撮影に協力したプロレス団体のFMWはとうに崩壊してなくなってしまった。俳優として登場した冬木弘道は先年亡くなり、田口の相手役を演じたハヤブサは試合中の事故で半身不随となっている……。ああぁ、やはり現実はプロレスよりもはるかに過酷と言うべきか。

MASK DE 41の公式サイト

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2005年1月28日発売、レンタル開始の新作DVD「MASK DE 41」(マスク・ド・フォーワン)を鑑賞した。リストラされたサラリーマンが、大好きなプロレス稼... [続きを読む]

受信: 2005.02.09 23:35

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