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2005.01.22

名取洋之助『写真の読みかた』

写真は必ずしも真実を伝えるとは限らない。「真を写す」という名を持つメディアは、使い方次第で実にたやすく多くの人々を欺くことができる。前後の文脈から切り離した写真に新たな物語を付与することで、意図的に驚くべき新事実を捏造することが可能なのであった。日常にあふれかえる「嘘」や「やらせ」の片棒を担ぐ写真を、我々はどのように読み解けばよいのだろうか。

2002年にちくま文庫から出た新藤健一の『崩壊する映像神話』は、こうした写真や映像の持つ「魔力」について検証した書であった。誰もが知っているような事件を取り上げ、それを伝える写真と映像がどのように使われていたのか、具体的に考察がなされている。一人歩きするほどに写真に力を与えてしまった人間は、それによって自らが欺かれるという愚かな無限ループに落ち込んでいる。

魔術的な写真の持つ力を理解した上で、それらをいかに読むかということを論じた書が、名取洋之助の『写真の読みかた』である。初版が出たのが1963年でもう40年も前になる。長く絶版になっていた名著が昨秋リクエストで復刊された。もっとも岩波のリクエスト復刊は文庫も新書も足が速いので、もしかするともう店頭にはないかもしれない。見かけることがあったら、好著ゆえ、手に入れることをお勧めしたい。私もかつて読んで書架に収めたはずなのに、ついぞ見当たらないので、この度のものを買い込んだ。

圧巻は第1章「写真の読みかた」と第3章「二つの実例」である。前者は「写真は正確か」「写真の嘘と真実」「記号としての写真」など、上に書いたような問題点について説き明かし、後者では組写真の基礎的な技術を解説した後、写真の組み方(順・レイアウト・キャプションなど)によって伝えられる事実の相貌がまるで変わってしまう「トリック」を披露する。写真の虚実や文字と写真の関係、そして組写真のもたらす新たな物語の妙。写真を読むことを意識し始めると、今度は撮ることや見せることにも意識的になるのは必定であろう。ここに説かれた優れて汎用性を持つ「写真の享受方法」は、世紀を超えても決して古びることはないと思う。(岩波新書、1963年11月)

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コメント

>winter-cosmosさん
使い方次第で写真はどのようにでも変わるということなので、自分自身に嘘をつかないようにすればいいかと思っています。この本、きっとなくなったらしばらく再版しないはずなので、今読まなくても買っておくことをお勧めします。

投稿: morio0101 | 2005.01.25 00:14

 昨日出かけたときに、市内の大型書店で「写真の読みかた」見つけました。
 『「嘘」や「やらせ」の片棒をかつぐ写真』を思うとメマイがしそうです。(@-@)

投稿: winter-cosmos | 2005.01.23 13:24

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