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2005.01.26

銀のエンゼル

子供の頃、森永チョコボールの懸賞であるオモチャの缶詰を手にしたことがある。地道に銀のエンゼルを五枚集めてもらったのであった。思えば、金のエンゼルは多大なる幸運によってもたらされる宝くじ的な性格が強く、基本的にはあちら任せの遠い存在である。しかし、銀のエンゼルは5枚を集めきるという意志や根気こそがまずは必要であって、しかもその間、目標(大袈裟)に向かって楽しんだり気持ちを高めたり興奮したりなどというすばらしさがある。もちろん集めきれないまま終わることもままあるだろうが、それもまた一興である。そんな銀のエンゼルを題材にした物語。

まもなくすべてを覆い尽くす雪が降り始めようとする北海道斜里町。この町の国道沿いのとあるコンビニエンスストアは、店長の佐和子(浅田美代子)が日夜元気に切り盛りしている。佐和子の夫でコンビニオーナーの昇一(小日向文世)は、店を彼女に任せきりにして気儘な生活を送っていた。ところが、娘の由希(佐藤めぐみ)の懇談にでかけようとした佐和子が交通事故を起こし、長期入院することになってしまった。やむなく昇一が代わりを務めることになったのだが、勝手がわからず、自信もなく、右往左往するばかりである。さらに図らずも二人暮らしとなってしまった娘とも、最近はまったく向き合おうともしなかったツケが巡ってきて、険悪な雰囲気だけが漂う始末である。娘は娘で父親に東京への進学のことが打ち明けられず、またコンビニに集まってくる客の多くも、今の生活から先への一歩が踏み出せずにいる。人生の転換期を迎えた彼らはどのようにして自分の「銀のエンゼル」を集められるのだろうか。

「運良くひとつ当たりが出ても5枚そろえるのは至難のワザ。それはまるで手に届きそうで届かない夢や幸せのよう……」とキャッチコピーが語るように、映画「銀のエンゼル」は、チョコレート菓子のクジの本質または存在意義を人の生き方のメタファーとして提示し、様々な人間模様とドラマに仕立て上げて描き出す。舞台は不特定多数の人生が交錯する現代の社交場ともいうべきコンビニエンスストア。ここには現状に甘んじて動かない人や目の前の問題から逃げてばかりいる人、さらには自分の生きる道の選択を人任せにしてしまうような人々が、次から次に現れては消えていく。コンビニは、刹那的な彼らを「銀のエンゼル」に結びつけ、「5枚集めきる(新しい幸をつかむ)」という明日への意志と行動力を促していく。そしてたとえ結果が悪くても、自分の選んだ道なら後悔はないとする。テーマとしてはいささかストレートすぎる嫌いもないではないが、幸せなメルヘンの気配が濃厚なこの物語にはそれが似合っていると思う。舞台を雑駁な都会のコンビニではなく、余計なものを雪が隠す北海道にしたことも、それに連動しているとおぼしい。鈴井貴之監督の演出意図を慮るべきところであろう。

穏やかな小日向文世の父親像が秀逸である。反発する娘、佐藤めぐみとのやり取りに痛いものを感じる人も多いかもしれない。エンディングでの涙には思わず……。また浅田美代子の母親もよい。いい歳の取り方をして、味わいのある俳優になっている。

子供の私が銀のエンゼルを五枚集められたのは単に欲深かっただけであるが、それにしてもあのオモチャの缶詰にはいったい何が入っていたのだろう。今となってはちっとも思い出せない。遠いと思っていたものが現実になった瞬間、夢は色褪せていくということか。パンフレット、1000円は高すぎ。シネ・リーブル梅田で鑑賞。

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コメント

>winter-cosmosさん
そうそう、おもちゃの缶詰は銀のエンゼルが5枚揃ったこと自体に達成感がありすぎて、その先はほんとうにおまけになっていたのだと思います。それにしてもすごすぎです、その当選品の数々。お裾分けして下さい(笑)。

>m4
もう終わったの? 地元なのに。氷点下での撮影は激烈だったようです。ほとんど無人の地にコンビニ、まるで奥深い森の中のやさしいおばあさんの家のようで、やはりメルヘンの気配が濃厚です。前にも話題にしたことのある「小確幸」の積み重ねこそが、幸せな生活への架け橋なのでしょうね。お茶とチョコレートももちろん「小確幸」。

投稿: morio0101 | 2005.01.30 19:16

まだ見ていないのですが(公開期間短か過ぎだぞ、シネプレックス)DVDが出たら買おうかなと思っていました。
人生の一発逆転、なかなか体力と忍耐の要るものと感じるのはそれをちゃんと狙っているからでしょうか。いや、願っているのか。だからメルヘンの要素が強くなるのでしょう。
斜里は、なんにもない町です。コンビニエンスストアがあるだけでも奇蹟のような場所です。しかし、北海道のあらゆる場所にそんな店がぽつん、とあります。例の牛と風力発電機を撮った近くの海沿いにも店があり(24時間営業ではないかもしれない、ちなみに周囲に民家は無いに等しい)入ると、ほっとします。直接的な銀のエンゼルではないにせよ、心の何処かで願う一発逆転の為の小さなパーツを求めて、通りがかった車がとまるようです。私が買ったのは、お茶とチョコレートでしたが。

投稿: mi4ko | 2005.01.30 00:47

たぶん「おもちゃの缶詰」は当たった♪と言う幸運に満足したのかも。
「四次元ポケット缶」は出したら全部当たると思ってました。その話をしたら、みんなに笑われました。二通出して二つ当たったもので。
 他にも一通ずつしか出していないのに連続して、当たったものが三つ。これは同じ某コーヒーフレッシュメーカーの懸賞です。一つはパールのペンダントでした。
 ボスジャンは三通出して一着。他にもこまごましたものなら、もっと当たっていると思います。強運でした。
 洗剤はなるべく「ブルーダイヤ」を買うようにしていますが、当たりません。
 もう運は枯渇したみたいです(笑)。

投稿: winter-cosmos | 2005.01.28 20:00

>winter-cosmosさん
すごい当選率ですね。うらやましい。ずっと以前に、懸賞に応募することで日常生活の大半を賄うという人を、テレビで見たことがあります。目指しますか(笑)?

>marinさん
そうですよね。私も何だか気持ちが悪い。でも思い出せないのです。脳細胞の衰えをひしひしと感じています。

投稿: morio0101 | 2005.01.28 19:32

どうしても欲しかったオモチャの缶詰、何が入っていたのか今からでも知りたいです。morioさんとwinter-cosmosさん、何とか思い出して!!

投稿: marin | 2005.01.28 10:08

 私、金のエンゼルは二回ひいたことがあります。「おもちゃの缶詰」は何が入っていたか忘れましたが、もう一つは、おっきなキョロちゃんの形をしたスタンプでした。
 ちなみに「ドラえもんの四次元ポケット缶」も、しずかちゃんマークを送って、二回当てました。
 「ボスジャン」もそう言えば当てたし・・・もう一生分の運を使い果たしたかも知れません(笑)。

投稿: winter-cosmos | 2005.01.27 08:51

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韓国に映画留学中の鈴井貴之 第3回監督作品縷 映画『銀のエンゼル』 予告篇 http://www.ginen.jp/index.htm... [続きを読む]

受信: 2005.01.30 14:31

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僕が初めて懸賞で当たったのは、カルピスの「あらいぐまラスカル」のカレンダーでした。 しかし、それ以降は(大して応募しないけど)あんまり当たった記憶がありません... [続きを読む]

受信: 2005.02.20 12:01

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