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2005.01.19

ミスティック・リバー

ショーン・ペンの前作「アイ・アム・サム」が好きで、この「ミスティック・リバー」も観たいという気持ちはあったのだが、いかんせん暴力や死が苦手で敬遠したままだった。評判の良さに背中を押され、ようやく見た。

貧しい労働者たちの住むボストンのイーストバッキンガム地区の路上で、ジミー、ショーン、デイブの3人の少年がホッケーに興じていた。その時事件が起こる。警官を装った二人組がデイブを誘拐したのである。デイブは男たちから性的虐待を受けたのち、自力で脱出を図る。しかし、彼ら3人の中の何かが確実に損なわれてしまった。それから25年後、同じ街で雑貨店を営むジミー(ショーン・ペン)の娘が何者かに惨殺された。事件を担当する刑事は、かつての親友ショーン(ケビン・ベーコン)である。やがて捜査の先に一人の容疑者が浮かび上がった。あのデイブ(ティム・ロビンス)だった……。

謎解きのおもしろさやスリリングな展開は、ミステリーとして第一級の質を誇るであろう。加えて、単にストーリーを追うだけに終わらず、悲劇の淵に投げ込まれた人間の感情を丁寧に描くことに力を注いでいる。その重みたるや、生中なものではない。事件の真相は唯一無二であるが、それを解釈する人間の立場によって、まったく異なる相貌を持つリアルな現実として生成される。人間の愚かさ、弱さ、不完全さはもとより、愛の深さや善意までもが事態を悪化させることはままある。この映画では、生憎な悲劇の原因をそうした個々の感情の揺蕩いと複雑な錯綜に求め、過去の誘拐事件と現在の殺人事件に翻弄される人々の姿を冷徹に映し出そうとしている。

主演の3人はもちろん、脇を固める俳優陣も水際立った演技を見せる。監督はクリント・イーストウッド。音楽も手がける。全編がボストンで撮影された。それが一層の生々しさを生むことになったとは、ティム・ロビンスのことばである。

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コメント

>よ
「アイ・アム・サム」はDVDもCDも買ってしまいました。ビートルズは誰が演奏しても素敵に聞こえるから不思議です。子役のファニングちゃんもとても可愛かった。
「ミスティック・リバー」を止められている理由は何なんでしょうね。殺人とか暴力とかそういうのが駄目?

追記:「ロスト・イン・トランスレーション」のサントラも楽しんでます。

投稿: morio0101 | 2005.01.21 23:01

アイ・アム・サムは素敵でしたね。
サントラも愛聴してます。
ミスティック・リバーは まだ観てません。つか覚悟しなきゃ観れない気がしてます。
僕は人から『おまえはこの映画は観るな』とか『おまえは観たらダメ』とか言われることがあります。
どういうことなんでしょう?

投稿: yo | 2005.01.20 23:55

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