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2005.02.16

犬猫

concorde「広告」2004年11月号は二大特集が組まれていた。一つは戦後高度成長期の象徴である新幹線の存在意義を考える「天才! 新幹線」。そしてもう一つが「女の子のための日本映画講座」である。なにゆえ「女の子」に限定するのか、私にはよくわからない。この雑誌って女性誌なんですか? いや、それはともかく、まず特集のアタマに麻生久美子のオールカラー6頁記事があるのがよい。さらに本編に寄稿している人も一癖二癖ある強者が揃っていて読み応えがある。穏当な日本映画史紹介では決してないけれど、当たり障りなく並べてもおもしろくないですしね。

さてその特集の中に「ガールズ・ムーヴィおススメ10」というコーナーがある。タイトルを列挙してみよう。

「HOUSE」「ふたり」「濡れて打つ」「1999年の夏休み」「ラブ&ポップ」「キューティーハニー」「blue」「二人が喋ってる」「ジョゼと虎と魚たち」「櫻の園」「ジャンケン娘」「ひばり・チエミの弥次喜多道中」
新旧硬軟いろいろ揃っている(笑)。

上記記事では、昨年2004年はガールズ・ムービーの「秀作が立て続けに現れた年として記憶される」として、「下妻物語」(深田恭子・土屋アンナ)、「花とアリス」(鈴木杏・蒼井優)、「犬猫」(榎本加奈子・藤田陽子)の三本を掲げ、「この三本が登場しただけでも、2004年の日本映画は明るかった」と締めくくる。「下妻物語」「花とアリス」の両作はともに大のお気に入りで、それをここで語り始めるとキリがなくなるのでやめることにして(笑)、残る「犬猫」がようやく関西で公開されたので、早速喜び勇んで見に行ってきた。

幼稚園時代からの幼なじみで、性格は正反対なのに好きなものは一緒という二人の女性の関係を、時にコミカルに、時にシリアスに描く。榎本加奈子演ずるヨーコと藤田陽子のスズの妙にずれたコンビネーションが楽しい。ヨーコとスズはこれまで一人の男を奪い合うという修羅場をくぐり抜けてきており、この映画でも古田(西島秀俊)と三鷹(忍成修吾)の存在が二人の関係を微妙なものにする。この「仲がいいんだか、悪いんだか(映画のコピー)」というどこにでもありそうな人間関係を見るにつけ、この映画のタイトルが「犬犬」でも「犬猿」でもなく「犬猫」であることが、兪として巧妙に働いていると思わされた。十代ならではの疾走感を持つ女子高校生を描く「下妻物語」「花とアリス」とは異なり、それなりに酸いも甘いもかみ分けた二十代後半の女性の哀愁がほどよく形象化されていると思う。

見ているものを驚かせるようなドラマは何も起こらない。すぐそこにある日常生活を営む二人の女性をそのまま掬い取る。奇跡の大作ではなく珠玉(ちょっと褒めすぎ)の小品。あけすけな言動があまり好きではなかった榎本加奈子を見直した。藤田陽子もよい。テアトル梅田で鑑賞。

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コメント

>atcyさん
まさしくそれです。以前atcyさんから「必ず見るように!」と勧められた逸品です(笑)。その後、この雑誌でタイトルを見て、「おお、他にも勧める人がいる」と妙なところで感動してました。気にはしているのですが、なにぶん小心者&純情ゆえ、レンタル屋で某コーナーに入れなくて。「ほんまかいな」という突っ込みは無視します。

投稿: morio0101 | 2005.02.19 22:57

「濡れて打つ」は金子修介監督作品のことかなあ。学生の頃あれを観て、ラストの岡ひろみとお蝶夫人の対決に於いてのウルトラCとも言えるオチのつけ方に椅子からずり落ちてしまった経験のあるワタシは、珍さんがこの映画を観ることなく余生を平和に送られることを願ってやみません。観たら人間崩壊確実です。いや、それはそれで優雅で甘美でもあるのだけれど。(笑)

投稿: atcy | 2005.02.19 10:01

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