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2005.03.16

角田光代『対岸の彼女』

角田光代。私の頭の中では長い間大平光代とごっちゃになっていた。極道の妻から弁護士、大阪市助役となった『だからあなたも生きぬいて』(講談社)と叫ぶ彼女は、小説もたくさん書いているのだなぁと……。今は間違えていない(笑)。

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『対岸の彼女』は立場の違う女性間の友情をテーマにする。主人公楢橋葵の高校生時代と現在の生活とが交互に組まれている。高校時代の方は葵の一人称視点で描かれ、現在の方では小夜子という葵の会社に勤める主婦の視点から客観的に描かれる。実験的というほどではないが、「かつてこんなふうに考え行動していた人が、今は第三者から見てこうなっている」という枠組みがおもしろいと思った。ただ肝心のストーリー展開が緊張感に乏しく、惹き込まれるという感じが薄い。中学、高校時代のいじめや働く母親とその家族、さらに昨今の「負け犬」やら、今時のものがちりばめられてはいるものの、それらはそこにあるだけで、どこにも進んでいったり、掘り下げられたりすることはない。文藝春秋のサイトには、

30代、既婚、子持ちの「勝ち犬」小夜子と、独身、子なしの「負け犬」葵。性格も生活環境も全く違う二人の女性の友情は成立するのか!?
「負け犬」という言葉が社会的に認知されたいま、ついに書かれるべくして書かれた小説が登場しました! 独身の女社長・葵と、夫と子供を持つ主婦の小夜子は共に三十四歳。性格も育った環境も違う二人の女性に、真の友情を築くことはできるのか——。働く女性が子育て中の女性と親しくなったり、家事に追われる女性が恋愛中の女性の悩みを聞くのは難しいもの。既婚と未婚、働く女と主婦、子のいる女といない女。そんな現代女性の“心の闇”がリアルに描かれます。

とあるけれど、このあらすじがある意味『対岸の彼女』のすべてである。そう言ってしまうと身も蓋もないか。角田自身は、己や相手の立ち位置を区分けしようとする女性の姿や気質、そして異なる立場にある女性同士でどういう通じ合い方ができるかを書こうとしたようだが、「ホップ・ステップ・ジャンプ」のような進行では陳腐の謗りは免れないだろう。もちろんことばや文章を味わうという小説でないことも確かである。そのあたりが物足りなく思った。

第132回直木賞受賞作である。山本文緒、乃南アサ、村山由佳、唯川恵、宮部みゆき、江國香織ら、ベストセラー量産の当代人気女性作家が軒並み直木賞を受賞した今、「やっともらえてよかったよかった」ということだろうか。他の作品を読んでいないので憶測でしかものが言えないのだが、どの部分に角田の特徴があるのか、私にはよくわからない。今は多くの女性作家の中に埋没しないように「だからあなたも生きぬいて」というしかない。(文藝春秋、2004年11月)

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コメント

http://worldwalker.ameblo.jp/day-20050413.html

大平光代さんについてはここでも言及されていますね

投稿: 助役 | 2005.04.13 01:05

>Wind Calmさん
ああ、よかった。私以外にも大平光代と角田光代が一体化している人がいて(笑)。でも見た目は全然違いますね(言ってはいけない?)。

投稿: morio | 2005.03.17 00:46

 本日はありがとうございます。
 お二人がごっちゃになっていたのは私も同じです ^^; 最近やっと、分離できました。

投稿: Wind Calm | 2005.03.16 19:18

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「対岸の彼女」を読み終わった。 ・同じものを見ていたはずの相手が違う場所にいるのが怖い・・ ・バイバイという言葉が変わらない明日と同義語だったころ・・ ・同じ... [続きを読む]

受信: 2005.03.25 00:10

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