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2005.04.30

長田弘『ねこに未来はない』

『深呼吸の必要』を読んでから、すっかり長田弘が好きになった。その長田の書いた猫本がすこぶる評判がよい。これは読まないわけにはいくまいと意気込んで買い込んだのは、今年の冬だった。やっとここにエントリーを果たす(苦笑)。

もともと猫嫌いだった長田が、無類の猫好きの女性と結婚する。そして二人は予定調和的に猫を飼うことになる。そこで長田は妻から「ねこには未来がない」ことを教えられた。これは文字通りの意味ではなく、「猫には未来を予測する能力(=前頭葉)を欠いている」ということらしい。事の真偽は定かではないが、長田はその「格言」から、生命のすばらしさや儚さ、喜怒哀楽、そして何より今を積み上げることの大切さについて深く思いをいたすことになる。

ともすれば、こういう書は教訓的になりがちである。しかし、猫を溺愛するでもなく、かといって毛嫌いするでもない、そうした自然体の視点からの物言いに、押しつけがましさや説教臭さは感じられない。長田夫妻の飼った猫たちの幸薄い(ように見える)生き方が、詩人の紡ぎ出す文章となって澱みなく読者の中に流れ込む。やや置いて猫の生は私たち自身の問題に重なり始める。

どこまでも猫に注がれる静かなまなざしを感じることができる。何かを見つめるとはこういうことかと思わされた。(角川文庫、1975年)

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2005.04.24

恋の門

東京勤めになってからというもの、日々の生活に追われてしまって他のことをする余裕がまるでなくなってしまった。自転車は通勤や買い物に使うので乗り回していたが、本を読んだり、映画を観たりする時間は激減した。ああ、吐き出すばかりの日々。きちんと息を吸い込まないと酸欠死しそうである。そう思っていたところ、近所とは言い難い場所にではあるが、幸運にもツタヤを発見した。ようやく今月初映画となった。劇場公開時に少しだけ気になっていた松尾スズキ初監督作品「恋の門」である。

二十歳、無職、貧乏、童貞の蒼木門(松田龍平)は、石に漫画を描く「漫画芸術家」を名乗っている。もちろん売れていない。門はアルバイト先で知り合ったOLの証恋乃(酒井若菜)と気になる関係になるが、彼女は実はオタクな同人漫画家かつコスプレマニアであった。門は恋乃の趣味に強い衝撃と違和感を感じながらも、なんとか恋の成就を目論む。しかし、そんな彼に次から次へと無理難題が降りかかってくるのだった……。

羽生生純の漫画を原作とする。原作は多くの熱狂的なファンを持つらしい。映画は漫画と演劇(松尾のテリトリー)を融合したかのような趣で、とにかく狭い空間にさまざまな要素が詰め込まれ、細かなディテールに徹底的にこだわったマニアックなものになっている。豪華な出演者陣(探すのが楽しい)から片々たる小道具にいたるまで、すべてに何らかの意味ある名辞が付されている。それはもうとてつもないほどの密度の濃さである。細部を愛でるということにかけては極めてよくできた作品であろう。それらのものに普段から親しんでいる人間にはたまらないと思われる。まさにオタクワールド全開といってよい。しかし、それは諸刃の剣であり、この世界に親しんでいない者にはかなり辛い要素ともなる。映画の推進力たる物語の展開がやや弱い(=ありきたり)のも、この種のオタク的世界観に親しんでいない者には厳しいところである。

どこまでもサブカルチャー系文化に親しんでいる人をターゲットにした映画である。とはいえ、気楽に場面場面を楽しむくらいの娯楽性はあると思う。緩い時間を過ごしたい人に。

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2005.04.18

東京で針穴三昧

針穴友の会の麻布十番ミータップに参加した。東京に来てからというもの、きままに写真を撮ることもかなわず、あっという間に三週間が経ってしまった。鞄にゼロピン(zero image 2000)と三脚を入れ、意気揚々とでかけた。しかし、集合場所である有栖川宮記念公園の最寄り駅である広尾にどう行けばよいのか、よくわからない……。仕方がないので、小田急線から千代田線に乗り入れ、一番近いと思われる乃木坂駅から歩いた。歩いた。歩いた。でも迷った。遅れた……。皆さん、すみません。自己紹介はできました。

参加者:m-nakaさん、Michiyoさん、tatuさん、ひまわりさん、あづま川さん、naomiさん、みずさん、macotoさん、いしぐろさん、しきはんさん、くみさん、morioさん(と自分で書くな)

 

気を取り直して歓談しながら撮影をする。お名前だけは以前から知っている人ばかりで、なんだか嬉しくなった。思いのほか、桜が残っている。「いちよう」というややこしい名前の桜があった。「新聞少年の像」という謎の銅像もあった。公園を出てからは麻布十番を目指してぞろぞろ集団が進む。大使館が居並ぶ界隈に雰囲気のよいミッション系の幼稚園があり、中に入らせてもらうことができた。もちろん針穴三昧である。すばらしい針穴写真は他の参加者に任せることにして、私は幼稚園の遊具や園庭などを撮っていた。まぁいいじゃないか。その後、昼ご飯を食べたり、有名な鯛焼き屋で一時間待ちとか一時間半待ちなどといわれたりする。鯛焼き一つに一時間も待てないのでパス。六本木ヒルズに向かった。

 

すごい人である。他に行くところもあるだろうにと思うが、他は他で混んでいるので、やはり東京という所は人が多いのだと思い知らされる。クモのオブジェのあたりに世界各国の意匠が施されたクマの置物がずらりと並べられていた。針穴魂が爆発した面々は鼻を膨らませながら撮影をしていた(大袈裟)。東京タワーが見えて嬉しかった。完全なおのぼりさんである。気のすむまで撮影したあとは、毛利庭園前のカフェでお茶やケーキを楽しみつつ、針穴談義をする。気がつけば、Michiyoさんたちの飛行機の時間が迫っていた。名残を惜しみつつお開きとなった。

concorde関西のミータップは夜の部がないはずがないので、大都会に一人放り出された私は途方に暮れた(嘘)。北海道、中日本、関西に緊急メールを発信しながら、小田急で帰途についた。自炊のメニューを考えながら……(詳細は「東京たるび」で)。

今週末から来週早々には久しぶりに「オオサカハリアナツウシン」も復活できそうである。まずはめでたし。

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2005.04.14

あなたの日本語力は

と問いかけるほどのものは残念ながら持ち合わせていない。しかし、日本語関係の書籍がひきもきらず出版されるのを見るにつけ、そういうことに関心を持つ人が多いのだなぁと、ついついそっちの方向に引き寄せられていく。

1 村上慎一『なぜ国語を学ぶのか』(岩波ジュニア新書)
2 金田一秀穂『新しい日本語の予習法』(角川oneテーマ21)
3 秋月高太郎『ありえない日本語』(ちくま新書)
4 前田富祺監修『日本語源大辞典』(小学館)
5 町田健『ソシュールと言語学』(講談社現代新書)

1はなぜ学校で国語を習う必要があるのかという根源的な質問に答えようとする一冊。愛知県の現役高校教員がものした。そういう解もあるというくらいの気持ちで読むのが吉か。ちなみに学習指導要領における国語の目標は「生きる力」を養うことを第一とする。2。あまりおもしろくなかった。日本語の話がしたいのか、金田一一族の話をしたいのか、よくわからない。3。おもしろかった。昨今、巷間の噂になるちょっとひっかかる物言いが俎上に載せられている。「ありえない」「なにげに」「さりげに」「やばい」「じゃないですか」「よろしかったでしょうか」などなど。日本語の今の一側面を知るのにはよいと思った。4は国語学の大家監修の巨大な語源辞典である。現時点では最も信頼できるものであろう。語源に関わるような状況証拠を徹底的に収集しようとする。至便。5は20世紀の言語学をリードしたソシュールに関するものだが、啓蒙的な新書には似合わないほど専門的な記述が展開される。これを読みこなすためには、かなりその筋の知識が必要ではないのか。

お気づきの方も多いと思うが、予告編があまりにも溜まってきたので、大掃除するためにこのエントリーを立てたのであった(爆)。とりあえず5冊やっつけた。

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2005.04.09

島本理生『ナラタージュ』

『シルエット』や『リトル・バイ・リトル』に比べて、筆力や構成力が格段に高まっていると感じた。これまで島本理生は同年代(高校生、大学生)の世界を狭く深く描く若手作家の一人という印象が強く、それ以上のものではなかった。ありていに言えば、島本がいなくても、綿谷りさや金原ひとみがいれば、それでもよかったのだ。しかし、この『ナラタージュ』で完全に独自の場所に到達したのではないか。開巻わずかなところで、作家が現役大学生であることを忘れ、物語の中に強く引き込まれた。さらに読み進めるうちに、生身の島本がどういう年齢でいかなる人間であるかは、いっさい意識に上らなかった。それくらい小説が自立している。

壊れるまでに張りつめた気持ち。そらすこともできない——二十歳の恋
大学二年の春、片思いし続けていた葉山先生から電話がかかってくる。泉はときめくと同時に、卒業前に打ち明けられた先生の過去の秘密を思い出す。今、最も注目を集めている野間文芸新人賞作家・初の書き下ろし長編。

出版社のサイトから引用した。ネタばれを懼れ、これ以上のことは書かないようにする。紛う方なき恋愛小説である。しかし、流行の恋愛小説というカテゴリーに括られて、十把一絡げにされてしまうことを強く恐れる。この小説はそうした「猫も杓子も」とか「雨後の筍」という軽いノリで書かれたものでは決してない。難病や幻想といった大技に頼ることなく、恋愛そのものに正面から向き合っている。そして人を愛することの痛みをリアルに伝えようとする。この痛みは深爪とかささくれとか軽い虫歯とか、とにかく始終忘れることができず、さりとてそのためにまったく何もできなくなるわけでもないという微妙なものである。チリチリとした断続的な小さな痛みは、かえって誰にとっても生々しい。そして痛みとともに揺曳する恋愛特有の甘美な心持ちももちろんここにはある。展開も穏やかな序盤と急激にハイテンションになる中盤から終盤の切り替えが見事であった。

成熟した文章をものすためには、意識的な訓練とともに積み重ねた経験が必要であると考える。芥川賞では綿谷や金原に遅れを取ってしまった感があったが(芥川賞を逃したことが遅れかどうかはひとまず措く)、この一作で島本は驚くほどのあざとさのないうまさを身につけている。自己の立ち位置をきちんと定めたと思われるだけに、次作がとても楽しみになった。(角川書店、2005年2月)

島本理生インタビュー
池上冬樹による朝日の書評

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2005.04.05

生活とは食べることなり

写真にてご報告。なんとなく細々と自炊継続中。

左上。atcyさんに「ケチャップチャーハンは卵で包んで下さい。というか何だそれ?(笑)」と東京たるびで指摘された一品。正体はこんなやつである。昨日の晩ご飯。

右上。中部の母から救援物資が投下された。名古屋の味セットである。ありがたや。カレーが食べたかったので、さっそく今日の晩ご飯に「名古屋コーチンチキンカレー」を採用させていただいた。うまうま。

左下と右下。そのチキンカレーの付け合わせに作ったサラダ2種。「ピーマンとジャコの炒めサラダ」と「 にんじんとツナのサラダ」である。スーパーで野菜類を安売りしていたのでちょっとだけ買ってきたのだ。ジャコは先日スパゲティに使った残り物。数日のうちにいったん大阪に戻るので、冷蔵庫の中のものを整理しなくては。

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2005.04.04

レーシング・ストライプス

見る予定にしていなかった映画だが、東京に発つ3日前に小学生の娘と一緒にでかけることにした。3月27日のことである。走ることが好きで競走馬になれると思い込んでいるシマウマが、幾多の困難や妨害を克服し、最後にビッグレースで勝利するという、非常にわかりやすい内容である。さらにとある事情で競走馬の世界からリタイアした元調教師が、シマウマによって復活を果たすというサイドストーリーも絡んでくる。

レーシング・ストライプス公式サイト

馬のことはよく知らない。しかし、サラブレッドは明らかに普通の馬とは体型が違うし、ましてシマウマは体格からして差がありすぎる。そのどうやっても勝てるはずのない相手に努力の末勝利するという図式に心をうたれる人もいるのだろう……か? 明らかに子供連れ家族を狙った安易な企画のように見えて仕方がない。どうしようもないということはないのだが、各エピソードの力のなさ(底の浅さ)が気になってしまって満足度は低かった。

努力・友情・愛。なんだか「少年ジャンプ」のキャッチフレーズのような要素が満載のこの映画、動物好きはそれだけで楽しめるかもしれないが、よほど好きでないと「ちょっと損したかも」と思いながら帰路につくことになるだろう。日本語吹き替え版の声優は著名な役者・タレントが担当している。主役のストライプス役は田中麗奈である。まぁまぁ(笑)。ワーナーマイカルシネマズ茨木で鑑賞。

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2005.04.02

東京たるび

知らない土地に来て、初めての一人暮らしを始めると、「おお!」とか「うわぁ」とか「えっ?」とかつぶやきたくなることが多い。しかし、ココログのエントリーとしていちいち立てるほどでもない。murmurに書いてもいいのだが、それだと以前にさかのぼれないし。ということで、はてなダイヤリーに東京生活にまつわるあれこれを書いてみた。

東京たるび

飽きるまで続けます。飽きたらやめます(笑)。期間限定で暖かく見守って下さい。

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2005.04.01

東京生活スタート

concorde生きてます(笑)。

部屋はまだこんな状態ですが。職場の方を先に片付けないとまったく仕事にならないので、そちらにかかりっきりである。家ではダンボールの中から必要なものを取り出すだけで精一杯なのであった……。しかし、食べることを放っておくわけにはいかない。初日は近所のファミレスですませた。そして2日目の今日(もう昨日)、自炊に挑戦した。

職場の事務方の人に近辺のスーパー(深夜営業がありがたい)のことなどを教えてもらい、帰りに食材の買い出しをする。メニューはスパゲティ・ペペロンチーノである。パスタ・オリーブオイル・ニンニク・鷹の爪をまずは買う。エキストラバージンオイルが安くて嬉しかった。他にレタス・トマト・もやし・塩・マヨネーズ・ポン酢・インスタントのコーンスープを買う。

concorde食材一覧。胡椒を買うのを忘れた(笑)。まぁ、いいや。しかし、調理にかかる前に重大なことに気がついた。食器がない……。茶碗・汁椀・はし・小さなスプーン・小さなフォーク・カレー皿5つ、以上。仕方がないので、カレー皿を三つと汁椀を使うことにした。実用本位で酷いものである(笑)。しかもカレー皿はどこかの引き出物でもらったもので、「私たちが愛を込めて選びました」というメッセージ付の超ファンシーな絵柄である。愛はいいから、今はいろいろな食器がほしい。

concordeペペロンチーノは大阪で買った自炊本に従って作った。ニンニクと鷹の爪とオリーブオイルの量がよくわからなくて、適当に投入(めちゃくちゃ辛かった、そして明日はたぶん臭い)。ぶつ切りにしたトマトも入れてみた。パスタを湯がいている間にもやしを一袋全部カレー皿に入れてラップ、そしてレンジでチンして蒸しもやしにする。レタスとトマトでサラダも作った。コーンスープはみそ汁のお椀に溶かして作った。完成! 食べた。一人で食べていると、家族や猫を思い出して切なくなったが、散らかった部屋を見て現実に引き戻された。

明日は千葉県の舞浜方面に出張ってきます。ディズニーランドではありません(笑)。

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