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2005.04.24

恋の門

東京勤めになってからというもの、日々の生活に追われてしまって他のことをする余裕がまるでなくなってしまった。自転車は通勤や買い物に使うので乗り回していたが、本を読んだり、映画を観たりする時間は激減した。ああ、吐き出すばかりの日々。きちんと息を吸い込まないと酸欠死しそうである。そう思っていたところ、近所とは言い難い場所にではあるが、幸運にもツタヤを発見した。ようやく今月初映画となった。劇場公開時に少しだけ気になっていた松尾スズキ初監督作品「恋の門」である。

二十歳、無職、貧乏、童貞の蒼木門(松田龍平)は、石に漫画を描く「漫画芸術家」を名乗っている。もちろん売れていない。門はアルバイト先で知り合ったOLの証恋乃(酒井若菜)と気になる関係になるが、彼女は実はオタクな同人漫画家かつコスプレマニアであった。門は恋乃の趣味に強い衝撃と違和感を感じながらも、なんとか恋の成就を目論む。しかし、そんな彼に次から次へと無理難題が降りかかってくるのだった……。

羽生生純の漫画を原作とする。原作は多くの熱狂的なファンを持つらしい。映画は漫画と演劇(松尾のテリトリー)を融合したかのような趣で、とにかく狭い空間にさまざまな要素が詰め込まれ、細かなディテールに徹底的にこだわったマニアックなものになっている。豪華な出演者陣(探すのが楽しい)から片々たる小道具にいたるまで、すべてに何らかの意味ある名辞が付されている。それはもうとてつもないほどの密度の濃さである。細部を愛でるということにかけては極めてよくできた作品であろう。それらのものに普段から親しんでいる人間にはたまらないと思われる。まさにオタクワールド全開といってよい。しかし、それは諸刃の剣であり、この世界に親しんでいない者にはかなり辛い要素ともなる。映画の推進力たる物語の展開がやや弱い(=ありきたり)のも、この種のオタク的世界観に親しんでいない者には厳しいところである。

どこまでもサブカルチャー系文化に親しんでいる人をターゲットにした映画である。とはいえ、気楽に場面場面を楽しむくらいの娯楽性はあると思う。緩い時間を過ごしたい人に。

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