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2005.04.30

長田弘『ねこに未来はない』

『深呼吸の必要』を読んでから、すっかり長田弘が好きになった。その長田の書いた猫本がすこぶる評判がよい。これは読まないわけにはいくまいと意気込んで買い込んだのは、今年の冬だった。やっとここにエントリーを果たす(苦笑)。

もともと猫嫌いだった長田が、無類の猫好きの女性と結婚する。そして二人は予定調和的に猫を飼うことになる。そこで長田は妻から「ねこには未来がない」ことを教えられた。これは文字通りの意味ではなく、「猫には未来を予測する能力(=前頭葉)を欠いている」ということらしい。事の真偽は定かではないが、長田はその「格言」から、生命のすばらしさや儚さ、喜怒哀楽、そして何より今を積み上げることの大切さについて深く思いをいたすことになる。

ともすれば、こういう書は教訓的になりがちである。しかし、猫を溺愛するでもなく、かといって毛嫌いするでもない、そうした自然体の視点からの物言いに、押しつけがましさや説教臭さは感じられない。長田夫妻の飼った猫たちの幸薄い(ように見える)生き方が、詩人の紡ぎ出す文章となって澱みなく読者の中に流れ込む。やや置いて猫の生は私たち自身の問題に重なり始める。

どこまでも猫に注がれる静かなまなざしを感じることができる。何かを見つめるとはこういうことかと思わされた。(角川文庫、1975年)

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コメント

>Muさん
仕事も何も手につかなくなるというお気持ち、同じく猫を愛する者として、お察しいたします。

飼い猫歴がたかだか4年ほどの私にはお役に立てるようなアドバイスもなく、ただただお気の毒としか言いようがありません。一日でも長生きさせてくださいとか、早く楽にしてあげてくださいとか、何を申しても無責任になってしまいそうです。マタリン殿、Muさん、そしてご家族の皆さんが幸福な気持ちを得られますことを、衷心よりお祈りいたします。

#麻酔の上手な動物病院というのはないのでしょうか。

投稿: morio0101 | 2005.05.04 22:09

人猫相談
 morioさん、折り入って真剣な相談。
 うちの18になるマタリン翁がな、先年末顎を外した。医者にいくと、麻酔をかけて手術すれば直ると聞いたが、ついでに「麻酔をかけると死ぬでしょう」と、言われた。
 爾来半年近く。
 必死で自然治癒をまったが。

 最近は下あごがずれにずれて、独りではご飯を食べられなくなって、注射器にスープみたいにしたご飯を食べさせておる。

 なんとかならぬかな。
 猫の接骨医とか。
 数日前に医者に言ったら、カテーテルを鼻から差し込んで食事をするしかないだろうとも言われた。

 なあ、18歳と申せば、120歳人間くらいかな。ともかく、最近、このことを考えると、仕事もなにも身に付かなくなる。

 妙案はなかろうか。

投稿: Mu | 2005.05.03 14:46

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