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2005.05.28

クローサー

パンフレットクローサー」とは実に象徴的なタイトルである。この映画に描かれるのは「より近くに」と願う男女の「さまざまな別れ」であり、いわばタイトルはアイロニカルに響くものであった。4人の男女(写真家・医師・小説家・ストリッパー)の織りなす愛憎劇は、英国の劇作家パトリック・マーバーの舞台が原作で、マーバー自身が映画用に脚本をリライトしている。監督は「卒業」で知られるマイク・ニコルズである。

小説家志望のダンはロンドンの街角で旅行中のアリスと出会い恋に落ちる。同棲を始めて1年後、ダンは写真家のアンナに心惹かれるようになる。しかし、アンナは医師ラリーと知り合いやがて結婚する。4人は真実と嘘と愛に翻弄されながら、逃れようのない人間関係の渦に巻き込まれていく……。

ジュリア・ロバーツ、ジュード・ロウ、ナタリー・ポートマン、クライブ・オーウェンという豪華なキャストを起用しながら、彼らの名前だけで売ろうとしない挑戦的な脚本と演出がよい。俳優たちもまた単なるスターの競演という安易さに満足することなく、劇中の人間として生々しいドラマを現出させている。甘いラブコメ調はここには存在せず、苦みのある恋愛の諸相(かくも残酷で辛いものか!)が丁寧に描かれているのであった。舞台劇が元になっていることをうかがわせる、4人の手練れの繰り広げるシリアスでウィットに富んだ会話の鬩ぎ合いこそが、この映画の最大の見所であろう。英語をまるごと理解できない自分の無能さを呪った(無念)。

主演の二人(ロバーツ、ロウ)より助演のポートマンとオーウェンが圧倒的にすばらしい。今年度のゴールデン・グローブ賞を揃って受賞しているとのこと。諾なるかな。劇中歌として流れるモーツァルトのオペラ「コシ・ファン・トゥッテ」(恋人の貞操を試そうとする物語)も、映画の内容と深く関わりながら、彼らの関係を見事に浮き彫りにしている。美しく巧みな選曲である。恋人たちの価値観は善悪や倫理とは無縁であり、ただ自分の感情に素直にあり続けようとするのみである。それが幸福なことなのか、不幸なことなのか、にわかには決しがたい。ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘で鑑賞。

余談:ナタリー・ポートマンの演ずるストリッパーの役名、アリスだよ……。「パシューン、パシューン」とハッセルブラッドのシャッター音を響かせるジュリア・ロバーツ。あの音にくらくらした。あとは巨大な水槽のロンドン水族館に行ってみたいと思わされた。

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