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2005.06.18

石田衣良『池袋ウエストゲートパーク』

池袋には行ったことがない。この小説を読むと、まだ見ぬ池袋という街がとてつもなく凶悪な場所のように思える。どうなんだろ?

2003年に直木賞を受賞した石田衣良のデビュー作にして出世作。2000年には宮藤官九郎脚本でテレビドラマ化もされており、長瀬智也(「タイガー&ドラゴン」おもしろい)、窪塚洋介(どうしてる?)、妻夫木聡(大物感が出てきた)、坂口憲二(お父さんの方が好き)ら、いわゆる「イケメン」な若手俳優が揃って出演して、高視聴率を稼いでいたらしい。今思えば、確かにすごい組み合わせである。五年前はこうやってひとまとめにされていたのか……。

若者の風俗や生態を小説にしたものだと思っていたが、さにあらず。これはミステリーであった。だから先を急いで読みたくなったのかもしれない。しかし、そうでなければ、どうだっただろうか。早口で奏でるラップ音楽の歌詞のように、短い文を積み重ねる文体に疲れを感じてついていけない。1ページも2ページも句読点を打たずに書き続けるような作家、たとえば谷崎潤一郎が読んだとしたら、赤鉛筆で添削だらけになるような文章である。昭和初期から21世紀へ、文章もずいぶん変わったものである。

ミステリーだから先が気になる。しかし、目の前を通り過ぎた文章は次から次に脳裏の彼方にこぼれ落ちて、あとに何も残らなかった。いや、事件の結末だけは残った。とすると、私は結末を知るためだけに読書していたのだろうか? ここには「若者たちの鮮烈な現在」が描かれていると帯には謳われているけれど、この文章があとに何も残らないのと同じような軽さしか私には感じられなかった。

念のために言っておくけれど、物語そのものはおもしろかった。人物も魅力的である。しかし、再読味読するような文章の魅力はない。そういうことである。ならば、ビデオ化されているテレビドラマを見る方がより楽しめるかもしれない。なお小説の最後についている解説(池上冬樹)の内容は、まれに見る酷いものである。こういうものを書いて稼げるのなら、文芸評論家とはずいぶんいい商売だなと思う。(文春文庫、2001年7月)

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コメント

>marinさん
小説の楽しみ方に決まりがあるわけではないので、結末のみ追いかけることに含むものがあるわけではありません。この小説(IWGPと約すそうです)は良くも悪くもテレビ的な造りだと思いました。激しく揺れ動く場面が次々と流れ来るとでもいえばよいでえしょうか。味わい深さはないけれど、話に勢いがあるので、そういう部分では楽しめました。

解説は狭隘な偏見が執筆者の思考の薄っぺらさを強く印象づけます。そんな基準で作品を評価しているのかと唖然としました。

投稿: morio | 2005.06.22 00:16

結末を知るためだけに読書するということをよくやってしまう私です。が、改めて振り返ってみると、やはり読んでよかったと思える作品は、あとに何かが残っている...匂いであったり、虚しさであったり、あるいは希望であることも...。
ストーリーやプロットに目を奪われがちですが、やはり「小説」というもの、文章が命なのですね。

でも、この作品買ってみたくなりました。何故って...解説を読んでみたいからです。

投稿: marin | 2005.06.19 13:31

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