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2005.07.14

父と暮せば

黒木和雄監督の戦争三部作完結編。

「父と暮せば」公式サイト

第一作「明日」は長崎を舞台とし、被爆前日の市井の人々の生活を捉える。第二作「美しき夏キリシマ」は黒木監督の体験談をベースに、終戦間近の宮崎の中学生を描いた。そしてこの第三作目は井上ひさしの小説を原作とし、原爆投下から三年後の広島での父娘の様子を見せようとする。

原爆から奇跡的に生き延びた美津江(宮沢りえ)は、今は図書館に勤めている。自分だけが生き残ったことを負い目に感じながら、その苦しみとともにひそやかに暮らしているのであった。その美津江の前に原爆のことを調査しているという木下(浅野忠信)が現れた。美津江は木下に惹かれながらも、自分は幸せになってはいけないのだと、ほのかな恋心を押さえつけようとする。そんな時、原爆で亡くなったはずの父、竹造(原田芳雄)の霊が現れた。竹造の企ては美津江の心を開くことができるのか。

「父と暮せば」はタイトルが示すとおり、全編ほぼ宮沢りえと原田芳雄の二人芝居の結構となっている。手練れの二人の芝居は実に安心して見ていられる。しかし、そこがこの映画の弱点に思われてならない。なんだか芝居が上手すぎて、かえって芝居臭いのである。思うにあまりにも上手すぎるために、演技そのものに感心してしまって、肝心の物語すら客観的に眺めてしまっているのかもしれない。

しかしながら、それが映画の価値を損なうということでは、もちろんない。原爆のもたらした悲惨さを、わかりやすい物理的被害(人的または物的)で提示するのではなく、個人の胸の内に秘めた思いや生き方というまさにリアルな感情の部分に投影する手法は、その静けさゆえにより深い印象を残す。美津江の感情の権化として現れる竹造は、つまりは父の姿を借りて顕現する彼女の本音そのものであるが、映画の結末にいたって、戦争によって人生を変えられてしまった多くの人々の心の声として響いてくるだろう。けだし名作といえよう。

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コメント

>winter-cosmosさん
同意して下さる方がいて安心しました。上手すぎるというのも考えものですね。舞台の方の脚本は井上ひさし本人が書いているのでしょうか。あの作品なら舞台の方が自然にあの世界に入って行けそうな気がします。

投稿: morio | 2005.07.20 00:32

おっしゃるとおりです。映画では二人芝居に見とれてしまって、肝心のセリフが頭に残りませんでした。それが惜しい。

かなり可能性は低そうですけど、こまつ座の舞台も観てみたいです。

投稿: winter-cosmos | 2005.07.19 10:27

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» お楽しみ。 [緑の森を楽しく歩いた]
 映画の次はお芝居です。京都労演と言う会に入っていました。  滅多に観る機会のな [続きを読む]

受信: 2005.07.20 16:30

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