« インストール | トップページ | モーターサイクル・ダイアリーズ »

2005.07.02

目の前にあるかのごとく

最近の出版物の印刷クオリティの高さにはほんとうに驚かされる。もちろんコスト優先のものはその限りにあらずだが、美術書や写真集、またデザイン系の書籍の美しさには、目を見張らされることが多い。しかし、どれほどよくできた美術書であっても、書籍の大きさという物理的な制約を受けている以上、本物だけが持つ迫力と繊細さまでは、残念ながら感じ取ることはできない。いくら望んでも小市民的生活を送る私には、幅9メートルの「最後の晩餐」を自宅に持ち込むことはできないのであった。

結城昌子『原寸美術館』(小学館)はこうした願いに応える、今までありそうでなかった美術書である。すなわち、綺羅、星のごとき西洋名画のハイライト部分を原寸大で収録しているのである。ページを繰るごとに画家のものした生々しい一筆一筆が眼前に展開する喜びを感じることができる。むろん画家は絵の全体で何かを表現しているはずであるし、そうした鑑賞を前提に作品は描かれている。それは否定できない。しかし、それはそれとして、画家の手元が目の前にあるのはなんだか愉快ではないか。美術館でも作品に鼻先をつけるところまでは近寄ることはできないのだから。あの人やこの人の雑な塗り方に「自分にもできそう」なんて不遜なことを考えたりもできるのだった。:-P

美しいといえば、三好和義の『RAKUEN』(小学館)もすばらしかった。木村伊兵衛写真賞を受けたこの作もまた目を悦ばせてくれる一冊である。もともと小綺麗なだけの写真にはあまり興味はなかったのであるが、5月に川崎市市民ミュージアムで開催された木村伊兵衛賞受賞者の作品展で、三好のオリジナルプリントを見て、すっかりノックアウトされてしまった。鮮やかな色彩といえば蜷川実花のことが思い起こされるけれど、蜷川の人工的なそれとは違う強烈な自然の色(撮影地はセイシェルとモルディブ)を堪能することができる。

同じ場所で針穴写真を撮ったらどうなるのだろう。「南の島で針穴、いつかは」と暑さで少し鈍った頭で夢想する。

|

« インストール | トップページ | モーターサイクル・ダイアリーズ »

コメント

ゆ〜きさん、はじめまして。コメントとTB、どうもありがとうございました。

したり顔で語っておりますが、私とてこの種の物に詳しいわけでも何でもなく、単に好きであるという一点で、好き勝手におしゃべりしているだけです。素人の戯言でお恥ずかしい限りです。ただこの本のコンセプト自体がとてもおもしろいものだと思いますので、ぜひ一度手に取って御覧になってみてください。

今後ともどうぞよろしく。

投稿: morio | 2005.07.07 03:20

はじめまして。
TBをさせて頂きました。

仕事がら、たまに絵画や陶芸作品等をみることはあるんですが、
実際、私自身はそういったことには疎いんです。
でも、この“原寸美術館”という本にはとても興味が惹かれました。

投稿: ゆ~き | 2005.07.05 11:16

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/11234/4792078

この記事へのトラックバック一覧です: 目の前にあるかのごとく:

» 原寸美術館 画家の手もとに迫る [本の探検隊!
ブック・レンジャー plus]
 --------------------------------------- [続きを読む]

受信: 2005.07.05 11:14

« インストール | トップページ | モーターサイクル・ダイアリーズ »