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2005.07.26

森山・石内・エルスケン

■森山大道『BUENOS AIRES』(講談社)
森山大道にとってブエノスアイレスという街は40年来の憧れの地であったという。唐突に思われた両者の結びつきも、あとがきに述べられたこの一言で氷解し、さらに繰り広げられる紛れもない森山調の圧倒的な写真群を見るにつけ、彼らの関係性の必然を見る思いがする。決してラテンアメリカのなんたるかを知る写真集ではない。これもまた過去の書と同様、すぐれて森山大道という写真家の美意識を顕現した一冊であろう。それにしても森山の撮る動物は、どうしてああも人間臭く危険な雰囲気を発散させているのだろう。

■石内都『マザーズ 2000-2005 未来の刻印』(淡交社)
世界最大の規模を誇る国際現代美術展「ヴェネツィア・ビエンナーレ」は今年で51回を数える。この100年を超える歴史を持つ展覧会の、今回の日本館の代表に選ばれたのが石内都である。本書は同展の公式カタログとして出版されたものであり、中核となる「mother's」の他、初期三部作「絶唱・横須賀ストーリー」「アパート」「連夜の街」を収録する。亡くなった実母の遺品を淡々と写す「mother's」では、物言わぬ品々の静かな説得力に心を打たれるし、サイズは小さいとはいえ、幻とされる初期の写真集をまとめて見られるなど、石内の業績を知るにはよい写真集である。笠松美智子とサンドラ・フィリップスの解説も読み応えがある。

■Ed van der Elsken『セーヌ左岸の恋』(エディシオン・トレヴィル)
エルスケンが全盛の頃、かのブレッソンやドアノーよりも評価されていたらしいが、本書はその彼のデビュー作にして最高傑作の誉れ高いものである。ドキュメント写真のように撮られたものを再構成し、そこにオリジナルの虚構の物語を付与するというコンセプトやスタイルは、当時多くの写真家に衝撃を与えたらしい。今となってはそのスタイルは珍しくもなく、さらに付与された物語の陳腐さに、逆にそういうものは取っ払った方がよくはないかとすら思えるところだが、掲載された写真はいずれも今にも動き出しそうな生々しさを持つ。ローライの写真を堪能できる。

写真集を見るのは楽しい。値段の高いのだけがちょっと困りもの。

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