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2005.07.30

星になった少年

This film is based on a true story.

映画が始まる前、スクリーンに文字が浮かんだ。

星になった少年」は1992年に二十歳で夭折した坂本哲夢の象使いとしての半生を描く。脚本は坂本の実母の回想記(『ちび象ランディと星になった少年』、『ゾウが泣いた日』)を原作とする。この種の物語はわかりやすい悲劇と感動を強調しすぎることがもっぱらで、見る側に想像する余地(楽しみと言い換えてもよい)を与えてくれない嫌いがある。これもまたゴールが定まっているジェットコースター・ムービーの一種といえよう。結末がハッピーエンドかどうかはこの際問題ではない。

それでも劇場に足を運んだのは、主人公を柳楽優弥が演じ、その恋人役として蒼井優が出演しているからに他ならない。柳楽にとっては、カンヌを驚かせた「誰も知らない」(是枝裕和監督)での鮮烈なデビューに続く第2作目である。いったいどういう演技をしているのかと興味は尽きないし、加えてその柳楽と共演する蒼井がどう演じているのか。将来を嘱望される二人の映画俳優の佇まいに関心の中心があった。

実在の人物の生活を描くのであるから、印象的なエピソードの積み重ねで物語は構築される。しかし、映画は出来事を時系列に沿って並べることに忙しく、構成とか細部の描き込みに物足りなさが残っているように思えた。特に哲夢の生き方の転機となったタイ留学のことは、もっと時間をかけられてもよいのではないか。ここが物語のクライマックスであるし、同時に悲劇への分水嶺でもある。哲夢の劇的なまでの精神的成長と若きゾウ使いの誕生に重心を置くことで、その後の早すぎる二十歳の死の哀感(もちろんドラマとして)は高まることになるだろう。この映画ではそのあたりのメリハリの付け方や物語の見せ方に一工夫する余地があるのではないか。

気になっていた柳楽と蒼井であるが、もう少し両人の個性を発揮できる脚本の映画が観たいと思った。二人とも悪くはないが、二人でなければならない必然性は感じられない。ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘で鑑賞。

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