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2005.07.10

新しい「がんばっていきまっしょい」

長く版元在庫切れになっていた敷村良子の『がんばっていきまっしょい』(マガジンハウス、1996年)が、フジテレビ系の同名ドラマの放送開始に合わせて幻冬舎から文庫となって発売された。松山市主催第4回坊ちゃん文学賞受賞作を手軽に読めるようになったことをまずは喜びたい。

しかし、この文庫版はオリジナルに大幅な加筆修正がなされている。文庫版あとがきには「こんなことを書いたのかと赤くなったり青くなったりしながら、私はめいっぱい赤字を入れた」とある。映画だけでなく、オリジナル小説も幾度となく読み返した者にとっては、にわかにどちらがよいとは言いがたい。いや、すっきりと整理した分、オリジナルの持つ青臭い勢いや淀みがなくなってしまったように思われるのだ。特に結末の悦ネエと関野ブーの関係の描き方は、断然オリジナルがよいと思うのだけれど。これではなんとも淡泊で盛り上がらないから、派手さやわかりやすい感動を嗜好するテレビでは変更するではないだろうか。

そのテレビ版。これまた映画版を深く愛する者には、何とも違和感の残る代物になっていた。もちろん同じでなければならない理由はどこにもない。ただ映画版で描こうとしていた「理由なき不機嫌な思春期」という要素(そこが最大の魅力だろう)がまったくなくなっており、単に「脳天気で無責任にポジティブな高校生の物語」というそこらへんにいくらでも転がっているようなドラマになっている。一言でいうなら、既視感を覚える安物臭い学園もの……。

鈴木杏の演じる篠村悦子は、田中麗奈のそれとは異なり、あまりにも「天然」で「朗らか」、そして「機嫌がよすぎる」。ものを考えている素振りがほとんど見えないから、人物が薄っぺらで奥行きがない。関野ブーもジャニーズ事務所所属の歌手が演じているが、これもカッコつけすぎでいけすかない。すべては脚本のなせる業だろうが、「何か違うよなぁ」と思いながら最後までその違和感を拭い去ることができなかった。さらに原作のモデル校(夏目漱石の赴任校、正岡子規、高浜虚子、大江健三郎や伊丹十三らの母校、愛媛屈指の進学校)にありえないであろうアナクロなヤンキー軍団や低レベルの付和雷同組の存在にも萎えてしまう。もちろん今後どのような展開になるのかは、見てみないとわからない。

一方、映画版へのオマージュはあちこちに散りばめてあり、その点はにんまりとさせられた。伝説のクルーの「集合写真」、試験に手も足も出ない「達磨落書き事件」、艇庫での「靴下汚れ」、箒を使っての「キャッチ&ロー」、そして「一艇ありて一人なし」の文言……。今のところはそのあたりの楽しみしかないというのは言い過ぎか。せっかくだからもうしばらくはつきあうことにするつもりである。なお9月21日には映画版のコレクターズ・エディションDVDが発売になるらしい。こちらには大いに期待する。

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コメント

>ひぎり焼きさん
こんにちは。テレビ版の第2回目も見ましたが、がっかりすることばかりで、私も「もういいか」と思っています。あんなありがちな臭い学園ドラマなら、べつに「がんば」でなくてもよいでしょう。「友達をつくるために部活をする」なんていう台詞を吐く悦ネエなんて見たくないです。悦子は断じてそんな理由でオールなど握ってはいないと思うのです。

コレクターズ・エディションの情報はまだほとんどないですね。ここくらいでしょうか。
http://shopping.yahoo.co.jp/shop?d=vd&cf=0&id=384145

投稿: morio | 2005.07.14 01:24

今晩は。
以前「清水真美の引退」の回にコメントさせて貰った者です。

文庫版及びTV版について、私も同様の感想を持ちました。

特にTV版についての、「『理由なき不機嫌な思春期』という要素(そこが最大の魅力だろう)がまったくなくなっており』と言う所には、激しく同意して(興奮のあまり日本語変)しまいました。

それに、関野ブーやテンマ・カケルが、重要な場面で悦ネエに関わり過ぎるのに辟易します。まあキャスティングの段階で、こういう展開はある程度予想できたましたが、テンマ・カケルまで最初から重要な役どころで登場とは・・

今日2回目の放映がありますが「もう(視なくても)いいかな」って感じです。

映画版のコレクターズ・エディションDVD詳細はまだ分からないのでしょうか。楽しみです。

投稿: ひぎり焼き | 2005.07.12 21:20

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