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2005.08.07

角田光代『あしたはうんと遠くへいこう』

たいそうおもしろく読むことができた『夜のピクニック』の前日譚が収録されているというから、恩田陸の『図書室の海』(新潮文庫)を買ってきたが、これが実に難敵であった。結局、いくつかを読んだきりで投げ出してしまった。興味を持って読めたのは目当ての一編「ピクニックの準備」だけで、あとは習作のごとき文章の羅列に、すっかりくたびれてしまったのである。どんなに辛くてもたいていは読み切るのですがね(貧乏性なもので)。

角田光代の『あしたはうんと遠くへいこう』もまた途中で……、となりかけたものの、なんとかこちらは読み通すことができた。角田の直木賞受賞作『対岸の彼女』に格別惹かれたり感心したりしたわけでもなく(参照)、いや、むしろ腐したといった方が適切なのであるが、なぜ彼女の小説を再び手にしたかといえば、扉ページに自筆サインが付されていたからに他ならない。なんとミーハーな。

この小説は一人の女性の17歳から32歳まで15年間の恋愛遍歴を描く。「若者の今時の性と恋愛」とでも名付けた方がよいのでは思わされる内容で、しかもそれらはいつかどこかで見聞きした典型的かつ偏向的若者像をつなぎ合わせたようなものでしかない。とにかく間に合わせの道具仕立てと設定で、物語全体が安物臭いのである。今時の「働く女」をテーマにした『対岸の彼女』でもそうであったが、角田の小説を読むと、彼女なりに掘り下げたとおぼしき部分が見えてこないことがどうにも物足りなく感じられるのである。すべてが既視感に包まれた小説。(角川文庫、2005年2月)

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