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2005.08.14

リンダ リンダ リンダ

ザ・ブルーハーツの曲にまつわる個人的な思い出などはないし、彼ら自身に思い入れや愛着もない。私にとっては、80年代後半から90年代前半までの「バンドブーム」という看板で一括りにされたミュージシャン、グループの一つでしかなかった。もちろん当時ヒットしていた曲のいくつかは知っている。なかでもこの映画のタイトルにもなっている「リンダ リンダ」は、印象的なさびの部分が強く記憶の中に刻み込まれている。そこだけだけど。あとは「トレイン トレイン」とか、「キスしてほしい」とか。

#バンドブームに関係するミュージシャンでは、先駆けとも言えるレベッカとブームの申し子(異論はあるかも)であったリンドバーグが好きだった。Nokko・ラブ、渡瀬マキ・ラブ。

「リンダ リンダ リンダ」公式サイト

文化祭前日にメンバーの怪我と喧嘩で空中分解してしまった女子高校生バンドの三人が、新たなボーカルを迎え入れ、わずか3日でステージにあがろうとにわか仕立ての新バンドをスタートさせる。彼女らが選んだのは、たまたま部室にあったカセットテープから流れてきたブルーハーツ。これならできると「リンダ リンダ」で盛り上がる。急遽キーボードからギターに転向した短気な恵(香椎由宇)、素敵なクラスメイトにうつつを抜かす響子(前田亜紀)、熱いのか熱くないのかよくわからない望(関根史織)、そしてなんとなくバンドに巻き込まれてしまった韓国からの留学生ソン(ペ・ドゥナ)。四人組のロックバンド「パーランマウム」は果たして無事にステージに立つことができるのか!?

「その時にやりたいことを全力でやる」という物語である。大切なのは「できること」ではなく「やりたいこと」である。しかも明日ではなく今日である。この刹那的な感情の高揚感は、まさに中学、高校あたりでしか体験できないものであろう。小学生だとちと早すぎるし、大学生になると、もう将来のことを考え始めて、どうにもいけない。そうした時間や気持ちのありようのことを「青春」と呼ぶのであれば、まさにこの映画は青春映画以外のなにものでもない。これまでにもこのエッセンスを詰め込んだ名作は多々あるが、この映画もそれらに肩を並べるであろう出来映えであると思う。

ラストにコンサートがあって必ず盛り上がるというお約束のエンディングは容易に予想される。したがってそこに至る過程をいかに見せるかという点が重要になる。こうした結構は昨年大ヒットした「スウィングガールズ」と同じものである。ただ「ウォーターボーイズ」で興行的にも大成功を収め、メジャーのなんたるかを知った矢口史靖監督が手がけた作品は、手際よく整理されあか抜けたものになっていた。それに対し、山下敦弘監督の「リンダ〜」は必ずしもテンポよく進んでは行かない。むしろバタ臭いといってよい。しかし、そこがなんともいえないリアル感を醸し出している。「スウィングガールズ」が一種のファンタジーとなっているのとは異なり、「リンダ リンダ リンダ」はある意味で劇中人物の成長を記録したドキュメンタリーになっているとも言える。それくらい味わいが異なる。

#それでも名の通った俳優が多数出演しているので、山下監督の作品にしてはずいぶんとメジャー感の漂う作品になった。これまで韓流には興味はなかったが、ペ・ドゥナはとてもいい。

「リンダ リンダ リンダ」は一義的には青春映画である。それに加えて、もう一つ言い添えておくべきことがある。ソンが「パーランマウム(青い心=ブルーハーツ)」のメンバーの似顔絵の落書きを日韓文化交流研究会の宣伝チラシの裏にすること、日本人男子生徒がソンに下手くそな韓国語で愛の告白をすること、4人のメンバーが日・韓・英の入り乱れた会話をすることなど、それらがこの映画でさりげなく主張される「裏テーマ」としてとても象徴的に見えた。某国某首相などよりよほどすばらしい交流と相互理解をしているといえよう。

感情に引っかかってくる細かなフックがたくさん用意された映画である。無人の体育館でソンのするメンバー紹介はすばらしかった。萌役、湯川潮音の天使の歌声も耳をそばだてて聴くべし。まだ書き足りぬ思いが残るがひとまずここまで。それにしても軽音楽部の顧問として出演する甲本雅裕の実兄がブルーハーツの甲本ヒロトだったとは! テアトル梅田で鑑賞。

#映画からの帰りに、ブルーハーツのCDと映画のサントラCDをレンタルしました。

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