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2005.10.16

ふたつの「東京」

町田の空「東京はずるい」とmi4koさんが言った(mixi日記でのことなのでリンクはしない)。「この二文字を付けるだけで、いっぱしのブランドのように見えてしまう」というご託宣にはなるほどと首肯せられるところがある。方法としてひねりがなく、漠然としたイメージにのみ頼っているところは安易の謗りは免れないだろう。あっ、私の日記の名前……、「東京たるび」 :-P

「東京」の二文字を名に持つ書を二冊紹介したい。いずれも「東京」という名に頼ることのないよい本である。私の日記とはまるで違う(当たり前)。

川上弘美の『東京日記 卵一個ぶんのお祝い。』(平凡社、2005年)は、月刊雑誌「東京人」(都市出版)に連載中の記事をまとめたものである。川上には『椰子・椰子』(新潮文庫、2001年)という嘘日記の名作があるが、こちらは「五分の四くらいは、ほんとうです」(あとがき)とあり、基本的には彼女の日常生活の出来事を書いたものになっている。しかし、ここに描かれる世界はいつもの川上ワールドの不思議な空気感やおかしさに満たされており、なんでもないことが特別なことに見えてくる。

 ツボ押し器を三種類買う。蛙の形のものと、四面体のものと、杖形のもの。蛙の形のものを「タツヤ」と名づける。タツヤという名の人に知り合いがいないので。でもちょっと知り合ってみたい名前なので。
 夜、タツヤに腰と肩のツボ押しをさせたけれど、あまり効かない。

いいなぁ。この脱力感。ちなみに私にはタツヤという知り合いがいる(笑)。門馬則雄のシンプルな挿絵もよい味わいを醸し出している。

もう一冊の「東京」は東京都写真美術館の総合開館記念展の図録『写真都市TOKYO』(1995年)である。1980年代以降、写真家たちが変貌し続ける東京をいかに捉えてきたかということを探るもので、東京に造詣が深い実力派の作家が居並び見応えがある。長野重一・森山大道・潮田登久子・宮本隆司・林隆喜・瀬戸正人・鬼海弘雄・奈良原一高・須田一政・山﨑博・大西みつぐ・田村彰英らの寄稿文からは、彼らの東京観や写真についての考え方がうかがえて興味深かった。この写真総点数220枚全240頁の図録がわずか1000円、東京都写真美術館を訪れた折には手に取って見られたい。

写真は今日の町田の曇天。なお「東京たるび」はこれからもあんな感じです :-P

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コメント

>4
ひ〜(と意味もなく言ってみた)。ひねりのない直球勝負なんですけどね。「旭山イワンの叫び声」とか「北の女王様のご託宣」とか、そんなのを希望。

投稿: morio | 2005.10.26 01:26

かっこいいもん。真似しようとして挫折したさ〜。
だからずるいと言うのさ〜。

投稿: mi4ko | 2005.10.25 22:36

>4
新横浜から大阪に戻る新幹線で、よく崎陽軒(シウマイで有名)の「横浜チャーハン」という駅弁を食べるのですが、あれが「町田チャーハン」とか「吹田チャーハン」だとやはりありがたみが半減です。地名マジック、ここにあり。

http://www.kiyoken.com/ajiwai/obento/chahan.html

なんで、私が「大阪」を使うの、ずるい、の?

投稿: morio | 2005.10.24 01:49

そういえば、女満別って合併して町名が無くなってしまった筈。空港はそのままなのかな。(呟く程度の事なので検索はしないぞ)

大阪、は、もりおさんが使うとずるいです。そうや、小樽、横浜、神戸、長崎あたりもずるいかも。港町はずるいのか? 稚内は駄目っぽいが。

投稿: mi4ko | 2005.10.22 22:31

>mi4ko & ayano & miu
まともに名前を返すのはいつ以来だろう?

話題が拡散しすぎて、どこに突っ込めばよいのか、ひとしきり悩んでおりました。

乳製品や寒い海産物だと圧倒的に「北海道」「北」という名前が猛威を振るい始めますね。同じく雪に閉ざされても「関ヶ原バター(あるのか)」より「足寄バター(あるのか)」の方がありがたい(かも)。

地名に特定のイメージを埋め込んで一人歩きさせるというのは、和歌の世界では「歌枕」と呼び慣わし、千年を超える伝統を誇っていますから、きっとそのDNAを今も産業界は伝えようとしているのだと思います(強引)。

で、大阪もずるいの?

投稿: morio | 2005.10.19 01:43

そうさな
女満別のほうが迫力あるな。同じ5文字でも>旭川

投稿: み | 2005.10.18 20:25

そうさな
大阪もずるいわな。

投稿: み | 2005.10.18 20:24

言葉が足りなんだが(あの時は説明必要ナシと思ったのだが)
ずるいと思った理由の一つにはゴロが良い、というのもありました。
ほっかいどぅ、って言葉として長すぎるのです。ましてや旭川なんてリズム悪過ぎ。
今はコピー等の規制が厳しいので、最もゴロの良い「北の〜」が多用されて
おります。道内産の蟹など、もぉ、少ないですからね(お気をつけあれ)
そんな訳で、やはり東京は狡いのです。ワタシは「東京たるび」も「オオサカハリアナツウシン」も好きです。

隣の芝が青いのは、真冬でも、そう、ですか。


あ、タツヤという知り合いは居ません。たぶん。

投稿: 4 | 2005.10.18 14:30

わたしもみさんに一票。
東京育ちの人間は、「東京ほげほげ」というものにまったくありがたみを感じません(^^;

北海道、とつくと、なんだか雄大で(自然などの場合)、おいしそうに(食べ物の場合)思えてしまうからズルイ。
同じメーカーの牛乳でも、北海道、とついていると20円くらい高かったりします。
ずるい~(笑)

投稿: ayano | 2005.10.17 17:45

釜から上がって湯気を立てるカニや
牧場で草を食む乳牛や
行っても行っても続く一本道や
真っ赤になって泣いてるムネオや
ヅラをぱっくり上げて「長い夜」を歌うチハルや
アメリカンカントリーなログハウスでシチュウーすするあったか家族や
下駄箱の上の瓶の中でひっそりと余生を送るマリモの背後霊をもつ「北海道」

ずるい。

投稿: み | 2005.10.17 13:39

北海道もずるい。

投稿: み | 2005.10.17 13:29

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