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2005.11.14

イン・ザ・プール

小説と映画は別物とはいえ、これは原作の方がはるかに楽しめると思った。

奥田英朗の第127回直木賞候補作を原作とする。続編は第131回で同賞を受賞した。神経科医伊良部一郎(松尾スズキ)の無邪気で自由奔放な行動が、意外にも患者の病気を治癒に導くという結構である。強迫神経症(市川美和子)、陰茎強直症(オダギリジョー)、プール依存症(田辺誠一)といった患者達が登場する。

映画は原作の設定を一部変更している。それは映像化する(または娯楽作品として成立させる)ための方便として認められるだろう。しかし、伊良部一郎を演じる松尾スズキの演技が浮いて見えるのが、ことのほか辛かった。奇人変人ぶりをただ闇雲に強調しているようにしか見えないのだ。笑わせたい気持ちが空回りしているようであるし、そもそも原作の無邪気な伊良部と腹に一物ありそうな松尾とはキャラクターが相容れない。ひとりよがりなそれは、ひところの竹中直人の演技を見るかのようである。これは同じく松尾が主演した「恋の門」でも感じたことであった。

奥田の小説でもそうであるが、主人公は伊良部でありながら、実際には患者達の人となり、そして生活を描くことを旨としている。その患者を演じる市川美和子、オダギリジョー、田辺誠一の三人が、「ちょっとだけ心を病む人々」を好演していただけに、松尾「伊良部」のあり方がよけい惜しく思われる。狂言まわしなら狂言まわしなりの立ち居振る舞いというものがあるだろう。話自体はおもしろいのに。はからずも想像力にまかせるメディアとしての小説の力を再確認することになった。

監督と脚本は三木聡(「トリビアの泉」「ごっつええかんじ」などの構成作家)。そういえば今夏公開された「亀は意外と速く泳ぐ」も同監督の作品だった。あちらはテレビ的でもそれなりに楽しめた。

「イン・ザ・プール」公式サイト http://www.inthepool.jp/
奥田英朗直木賞関連 http://homepage1.nifty.com/naokiaward/jugun/jugun131OH.htm

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