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2005.11.17

浅草の鬼海さん

鬼海ぺるそな「情熱大陸」(TBS系)で鬼海弘雄が取り上げられたのは、『PERSONA』(草思社、2003年)が刊行された直後のことだった。家族や親類に支えられながら、好きな写真の世界で生きている姿を描こうとしていた。番組の中では鬼海の収入のことにも話が及んで、要するに「写真だけで食っていくのは大変だ」ということなのであった。華やかそうに見える世界の裏側には残酷なことも多いのだろう。

件の番組では浅草寺でポートレート撮影する鬼海を映し出していた。じっと人の流れを見ながら、これはという人に声をかけて撮影させてもらう。それをひたすら繰り返す。鬼海のポートレートのおもしろさは、本来多面的な存在であるはずの人間の一面だけを切り取り、ことばによってそれをデフォルメする点にあるとおぼしい。写真に添えられた一言が写真の中の人物の生き様を一挙に炙り出すように機能している。見る者にはわずかな情報しか与えられないのに、なぜか背後に広がる大きなドラマを感じさせるのだ。想像力が刺激されて愉快痛快としか言いようがない。

新しい『ぺるそな』は新たな写真と鬼海のエッセイを加えた普及版である。前作からぐっと買いやすい値段(2300円)になって嬉しい。人を撮る、人を見る楽しさを堪能できる。

鬼海の担当するエッセイ http://web.soshisha.com/archives/cat8/

さて、溜まってきた写真関係の本を一挙に大掃除することにする。

蜷川実花『Floating Yesterday』(講談社)
ひとつ前のエントリーで感想を述べたように、ニナミカ色全開の中に見え隠れする影が印象的である。凝った装幀で紙質も悪くないのに、常に買いやすい値段を守り続けるのは、この人の信念なのだろう。もちろん数が出るということが安くできる最大の理由なのだろうが。

野口里佳『in-between チェコ、キプロス』(EU・ジャパンフェスト)
欧州シリーズのトリを務めるのは野口里佳である。引き気味の視点から撮影された写真が居並ぶ。何を中心に置いているのか考えさせられる手法は健在である。それを読むことが楽しい。

『in-between 13人の写真家 25カ国』(EU・ジャパンフェスト)
シリーズに加わった13人の写真家による共演。全員が「食」「言葉」「人」「石・壁」などといった共通のテーマで撮った写真がまとめられている。普段のスタイルや被写体から離れた写真に、意外性の妙味が横溢する。

大西みつぐ『ほのぼの旅情カメラ』(えい文庫)
「水」をテーマにして日本各地を撮り歩く。なにげないスナップでありながら、一枚一枚に強い説得力を感じる。それは、おそらく大西が「切り捨て御免」ではなく、被写体に深い関心や愛情を持ちながら丁寧に写しているからではないだろうか。滋味に富む一冊。

藤田一咲『ローライフレックスの時間』(えい文庫)
この人は写真よりもカメラが好きな人なのだろうと思った。掲載される写真は、どれもカメラ雑誌の作例のように見えるのは私だけのことなのか。えい文庫からたくさん同じような本を出しているから、きっと人気はあるのだろう。資料をつけるなら、ローライの全機種を網羅してほしかった。

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鬼海弘雄の土門拳受賞作「PERSONA」が「ぺるそな」として草思社から出版された。 手頃な版型の普及版という位置づけらしい。 月球儀通信関連記事 - 鬼海弘雄 [続きを読む]

受信: 2005.11.19 09:29

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