« アイランド | トップページ | 美しき破壊者たち »

2005.12.17

石原千秋『国語教科書の思想』

国語教科書の欺瞞を暴く。

日本近代文学を専門とする石原は、その分析力を入試問題にも適用し、読解と批評を試みてきた。本書では同じくテクスト論の立場から、国語教科書を一冊のテクストと見なし、言説分析と構造分析を組み合わせて分析してみせる。

全幅の信頼を置く国語教科書にはいかなる思想性があるのか。感動的な物語や昔話には「裏」がないのか。たとえば「うんとこしょ どっこいしょ」のかけ声で知られる「おおきなかぶ」。最後にねずみが登場し、小さな彼(彼女)の力によって見事にかぶが抜けるところに感動の中心がある。しかし、その「登場順」は意図的に変更されたものだという。つまり「小さな存在の大きな役割」をクローズアップする「道徳」を説くための操作であるらしい。

同じように「道徳」を説くために、定番教材である「羅生門」「山月記」「こころ」「舞姫」が居並ぶ。エゴイズムを糾弾するその姿勢は、まさに「国語教材として打ってつけ」だと指摘する。禁断の果実「暴力」「セックス」「新興宗教」「天皇制」「差別」を巧妙に避けながら、ある種の「道徳」的価値観へ子供たちを導こうとする教科書の教材群。国語の読解力が身についたことは、すなわち「道徳的な枠組み」を身につけたことに他ならないとする石原の主張は、賛否両論となろうが、少なくとも無条件に信じているものへ眼差しを向けさせるという点で、貴重なものであることは間違いなかろう。(ちくま新書、2005年10月)

|

« アイランド | トップページ | 美しき破壊者たち »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/11234/7671430

この記事へのトラックバック一覧です: 石原千秋『国語教科書の思想』:

» 生きるという悪 [聴こえてくるのは潮風だけじゃない。]
読書会初日であります。 サークルなどまったく縁のないものと思って生きてきましたが [続きを読む]

受信: 2005.12.23 00:14

» 生きるという悪 [聴こえてくるのは潮風だけじゃない。]
読書会初日であります。 サークルなどまったく縁のないものと思って生きてきましたが [続きを読む]

受信: 2005.12.30 22:58

» 生きるという悪 [聴こえてくるのは潮風だけじゃない。]
読書会初日であります。 サークルなどまったく縁のないものと思って生きてきましたが [続きを読む]

受信: 2006.01.03 19:04

« アイランド | トップページ | 美しき破壊者たち »