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2005.12.13

森達也『悪役レスラーは笑う』

グレート東郷プロレス初心者の元横綱曙が、悪役レスラーとしてグレート・ボノに変身する。彼はプロレスの師匠である武藤敬司の演じる悪の化身グレート・ムタとの競演を目論む。醜いがおもしろい。プロレスファンは知っている。ヒール(悪役)となるレスラーは、なぜかリングネームに「グレート」の屋号を掲げていることを。

まだプロレスが娯楽の王者だった頃の話。アメリカに伝説のレスラーがいた。高下駄に法被をまとい、「神風」のはちまきを締める。ファイトスタイルは奇襲攻撃と反則を専らにする。太平洋戦争直後の「敵国」の地で完璧なまでの「極悪非道なジャップ」を演じきった男は、ビジネスとしてのプロレスで大成功を収め巨万の富を稼いだ。その名はグレート東郷。

力道山が唯一無二のヒーローとなったプロレス黎明期から、ジャイアント馬場とアントニオ猪木という「新世代」が君臨する時代まで、日米を股にかけて活躍したこのレスラーは、逸話と噂の彼方にのみ存在する伝説のレスラーだった。その東郷を丁寧に追いかけようとした異色のドキュメンタリーである。プロレスというキワモノを文化や政治や国際問題の中に位置づけようとする。よくある底の浅い暴露話ではない。プロレスファンはもちろんプロレスに偏見や先入観を持つ人にも薦めたい。

21世紀に「グレート」の名を掲げて活躍するレスラーは、どれだけ日系人「グレート東郷」の志を受け継いでいるのだろうか。(岩波新書、2005年11月)

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