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2005.12.16

アイランド

アイランドユアン・マクレガーは「スターウォーズ・エピソード3」の来日キャンペーンをキャンセルした。それで何をしていたかといえば、別の主演映画のプロモーション活動に忙しかったという。その映画が「アイランド」(マイケル・ベイ監督)である。

2019年。リンカーン(ユアン・マクレガー)は汚染された外界から救い出され、今は完璧に管理されたコミュニティで暮らしている。単調な日々の楽しみといえば、ジョーダン(スカーレット・ヨハンソン)との密やかな会話だけである。ここの人々は地上で唯一汚染されていない楽園「アイランド」へ移住することを夢見ている。しかし、リンカーンはこの都市の真実を知ってしまう。生き延びるためにはこの「安全な都市」から「危険な外界」へ逃げ出すしかない。二人の脱出劇の成否は、そしてコミュニティの人々の運命は……。

いわゆる暗い未来を描くもので、ジョージ・オーウェルの『1984』を引き合いに出すまでもなく、今となってはこの種のものは枚挙に暇はない。人間のスペアを培養して云々という話にしても、マイケル・マーシャル・スミスの『スペアーズ』(ソニーマガジンズ、1997年11月)を即座に思い起こさせるし、何より「パーツ用飼育物」が逃げ出すという物語は『スペアーズ』の前半そのものではないのか! 見終えた後、思わず原作を確認したが、どうもそうではないらしい。『スペアーズ』の映画化権はドリームワークスが持っているはずだから、こうして公開されたということは問題がないからなのであろう。

スカーレット・ヨハンソン目当てでレンタルしてきたのだが、監督はあの「アルマゲドン」「パールハーバー」の人だったことに後から気付いた(むむ)。それなりの謎解きとそれなりのアクションで、とりあえず最後まで退屈せずに観ることはできる。扱っているテーマは人間のクローン問題というきわどいものであるが、重い問題提起などはいっさいなく、極めてシンプルな娯楽映画に仕立て上げられている。ベイにかかれば、隕石激突も真珠湾攻撃もクローンもみな単なる娯楽ネタでしかないということか。男前と美人が揃ってドラマを演じれば、それだけで盛り上がるのだなと、あらためてしみじみ思った、そんな映画だった。ユアン・マクレガーが「スターウォーズ」を放り出してプロモーションするほどのものかどうかはよくわからないけど。

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コメント

>Wind Calmさん
日本映画贔屓であることと、ベイ監督によい印象を持っていないことの2点がまずあるかもしれませんが、「亡国のイージス」は日本の抱える矛盾を娯楽作品化したという点で、私には興味深かったです。日本製SFアクションとしても、珍しくちゃちっぽくないところもよかったと思ってます。

「アイランド」も記事に書いたとおり、最後まで退屈せずに見終えましたが、主演があの二人でなければどうだったかはよくわからないところです。

投稿: morio | 2006.02.20 00:00

 いつもながら読み応えのある批評、感服しております。
 話は違いますが、なのにどうして、「亡国のイージス」への評価が高いのですか(あ、映画の方です)。不思議です。

投稿: Wind Calm | 2006.02.19 10:19

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