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2006.02.05

ウィスキー

日本では写真に写るとき「チーズ」と言ってにこりと笑う。「1足す1は?」「2(にぃ)!」とか。この映画のタイトルの「ウィスキー」もそういうかけ声の一つで、長くのばす「い」の音が口元を笑っているかのように見せるのであった。あたかもそれは  たとえ心がどういう状態であっても  幸せを写真に焼き付ける魔法の呪文のようである。

うら寂れた靴下工場で働く女性マルタは、経営者のハコボと仕事以外では会話をすることがない。ある日、ブラジルへ出国していたハコボの弟エルマンが帰国することになり、その間だけ夫婦のフリをしてほしいと頼まれる。ハコボの願いを聞き入れたマルタは男二人とともにぎこちない生活をし、やがて三人で旅行にまで出かけることになる。観光地での記念撮影で三人は「ウィスキー」と唱え、幸せそうな笑顔を浮かべる。その彼らの笑顔の裏側で何かが変わり始めていた……。

物語に登場するのはほぼ三人だけ、しかも彼らは寡黙で派手な立ち居振る舞いもない。劇的な事件も起こらない。ところが、ほんとうにささやかな感情の揺らめきや気持ちの移ろいが、さりげない仕草や表情からまっすぐこちらに伝わってくるのだ。けれんみのない演技には凄みすら感じられる。ここにあるのは良質のペーソスである。ウルグアイの乾いた色合いがなんとも美しい。

公式サイトによれば「南米の小国ウルグアイ。映画誕生以来、60本の映画しか作られていない国から、世界中を虜にする傑作が誕生!」とある。傑作とまで言い切れるかどうかは定かではないが、じわりと胸に染み込み確実な重みを残す映画であることは確かであろう。余韻と哀感に満ちたラストシーンが味わい深い。

「ウィスキー」公式サイト http://www.bitters.co.jp/whisky/kaisetu.html

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