ニワトリはハダシだ
この映画の存在価値は、公権力の汚職、知的障害者の社会参加と保障、在日朝鮮人への差別など、どちらかといえば正統派ドキュメンタリーの手法によくなじむ社会的問題を、軽みを持った娯楽作品としてまとめあげたところにあろうか。公式サイトには以下の紹介文がある。
少年・サムは15歳。重度の知的障害を持ちながらも、人並みはずれた記憶力を持っている。しかし、その能力が災いして、偶然にも警察の汚職事件に巻き込まれる羽目に陥ってしまう。権力を盾に、サムを犯人に仕立てようと目論む人々から彼を救い出そうと、一緒に暮らすチチ、在日朝鮮人のハハ、そして養護学校の教師までが、身体を張って事件の謎に挑んでいく!
公式サイト http://www.xanadeux.co.jp/niwatori/
軽やかであるとはいえ、それらの深刻な題材を気紛れに取り上げてみただけということでは、決してない。知的障害を持つ主人公の行動と彼の引き起こす一つ一つの事件は、映画の中では笑いの対象として描出されるが、その向こう側の笑えない部分もしっかりうかがわせることを忘れない。単なるお涙頂戴エンターテイメントに堕していないゆえである。
もっとも善意の人ばかりが回りを固めているところは落ち着かない気分がするし、あいわからずの障害者は純粋で無垢で優しい存在というお約束のような人物造形はなんとかしてもらいたいと思ったのも事実である。これは発想の転換(いや、勇気ある演出か)が必要なことだろう。とはいえ、俳優の演技、脚本、演出など、総じて平均点の高い作品であるといえよう。派手なところはないけれど、もっと多くの人に観られてよい映画だと思う。
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