間宮兄弟
観る前の唯一の心配は、この映画の原作者が江國香織であるということであった。独りよがりな生温い世界が展開されていると嫌だなと思っていた。しかし、それは杞憂に終わった。原作がいいのか(未読である)、脚本が見事なのか、そのあたりは判然としないけれど、全編を貫くからりとしたトーンと俳優陣の並々ならぬ力量によって、この映画にはとても心地好い時間が流れていた。
物語は一応ストーリーらしきものがありはするが、基本的にはシチュエーション・コメディー的場面の積み重ねが中心となる。そういう造作からいえば、荻上直子の「かもめ食堂」と似たものがあると感じた。両者が描き出そうとしているのは起承転結のある物語ではなく、主人公達の醸し出す空気感とか価値観であるという点、二つの映画を似たものとして並べるのはあながち的外れなことでもないように思われる。どちらも大いに楽しめる。
間宮兄弟を演じる佐々木蔵之介と塚地武雅のかけあいがいい。とりわけこれまでコミカルな役柄とは縁がなさそうな佐々木のはじけっぷりが微笑ましくもある。趣味というにはあまりにも濃すぎる二人の完結したライフスタイル(=オタクだ)は、他者を寄せつけない限りにおいて「永遠の微温」を保つことができるのだろう。ところが彼らはそれを自ら打ち破ろうとする。異世界の存在である「女性」を招き入れることで誘発される化学反応の妙味といったら! また間宮兄弟のペースに巻き込まれていく沢尻エリカ(ビデオ店バイト)と常盤貴子(小学校教師)のヒロイン二人もいい。オタクな二人を厭うこともなく、コケティッシュな魅力を振りまくことを忘れない。兄弟にとっての「世界に開かれた窓」はあまりにも刺激的である。
自分の好きなものを好きだと貫き通す心地よさを思い出させる。さまざまな「モノ」にあふれる間宮兄弟の部屋は、一度じっくりと見てみたいと思わせるものがあった。森田芳光監督作品。梅田ガーデンシネマで鑑賞。
公式サイト http://mamiya-kyoudai.com/
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